【延寿通信】 2008年09月01日(月)

延寿通信 第61号 2008年9月

貝原益軒の『養生論』 入浴の話を特集

延寿通信 第61号  2008年9月
『養生訓』と入浴

貝原益軒という人は、江戸時代1630年に生まれて、医者になる決心をして医学や本草学を学びました。しかし、医者として実際に患者の診察をすることはほとんどなく、むしろ、日本の各地を旅して自然科学を習得して、本草学の大家になりました。1714年、84歳で亡くなるまでに、学問の分野はますます広まり、自然科学の領域から、今で言えば社会学、教育学にも及んでおります。
たくさんの著書の中で『養生訓』(ようじょうくん)は、健康な暮らしへの助言が古典として、あるいは人生論のテキストとして、今もなお、広く読まれています。『養生訓』は貝原益軒が83歳のとき、1713年に出版されました。高齢にもかかわらず、旺盛な著作活動を続けていたのが、この人の特徴の一つです。
今回は、『養生訓』に述べられている益軒のお風呂の入り方をご紹介しましょう。
『養生訓』には心身の健康な暮らしへのアドバイスがたくさん詰まっておりますが、江戸時代という時代を頭に入れて、それらのアドバイスを受け止める必要があります。まことに、ごもっともな忠告があれば、逆に今の時代、滑稽どころか、逆に健康に好ましくない教えも見受けられます。なお、内容の是非は選別しておりません。
ここでは入浴に関する話題を集めますが、『養生訓』全体からはほんの一部です。今日、『養生訓』はリバイバルで広く読まれ、『養生訓』の解説書、入門書は、いろいろ出ております。ご興味ある方は、貝原益軒『養生訓』に、どうぞ挑戦してみてください。本稿では、岩波文庫の『養生訓』(石川謙校注)、および中央公論社の『日本の名著 貝原益軒』(松田道雄訳)を使います。

1.江戸時代の入浴事情
 はじめに、貝原益軒の時代の入浴というものを、理解しておかねばなりません。江戸時代も元禄年間過ぎて正徳年間(1700年代)ですので、町民はわりに豊かに、その日暮らしを楽しんでいたでしょう。益軒の晩年住んでいた九州博多あたりは、商人の町として結構栄えていたと思われますので、当時には珍しく家庭風呂の普及はあったかもしれません。そのころは商人といえども、通常はよほどの資産家でないと風呂を据え付けることはできませんでした。
風呂は入浴タイプよりも、地方によっては蒸し風呂タイプの多かった地域もあります。しかし、共同浴場となると、江戸の町の銭湯は『養生訓』の時代は、湯を浴びる浴場タイプ、湯屋が優勢でした。
江戸時代は、温泉は繁盛しており、益軒も温泉めぐりは好きで、全国の有名温泉を回っております。68歳のときは夫婦で二度目の有馬温泉を訪れ、しばらく滞在しております。温泉ですと、どっぷり湯につかる今日の銭湯タイプになります。
益軒は入浴の方法の一つとして、たらいによる行水(ぎょうずい)を取り上げております。ささやかながら湯を浴びる方式です。この方式は、大げさな設備がいるわけでなく、容易に道具が揃うので、江戸時代の家庭で普及していたことは想像できます。

2.風呂の入り方
 行水方式というのは、今では、赤ちゃんの入浴でわずかに残っておりますが、通常の家庭では過去の習俗になっています。戦後の1950年代には、行水は都会でも行われておりました。
 益軒の行水の説明では、先ず、たらいの大きさ・材質からはじまります。
 たらいの寸法は、縦が80cm、横が60cm、深さは40cm、板の厚みは1.8cm
底部はもうすこし厚いほうがいい、そして、ふたもあるほうがいい、板の材料は杉を奨めております。寒いときには、たらいの周りと上を囲み、風が通らないようにする、たらいはできるだけ深くします。湯の量は深さで18cmぐらいが適量だそうです。
温度と入り方ですが、ここで益軒は、たらいの一方に釜を据え付けて、水を深く入れて湯を熱くすることを奨めておりますが、しかし、からだを温め過ぎると、気を上らすので、大いに害があるといっています。これはまさに、風呂桶による入浴方式にほかなりませんが、益軒は健康上、深い浴槽に入るよりも、たらいの行水の方がいいといっております。
行水の場合、別の大釜に湯を沸かして、その湯をたらいに入れて、湯を浅くして熱くない湯に入り、早くつかってあがります。からだを温め過ぎないようにすれば、害は無い、と説明しております。出るときに、からだが温まらない場合は、熱い湯を加えて少し熱くして、早めに出てしまえば、からだに害はない、といいます。要するに、寒くない程度に、早めに上がるようにというのが、益軒お奨めの入り方になるようです。
 からだを温めすぎないこと、これを益軒は繰り返し注意しています。そのための方策でしょうか、益軒は、かけ湯という方式を奨めております。これは、たらいに湯を浅めに入れておいて、別に熱い湯を用意し、肩背から少しずつかける方式です。早めに止めると、気の循環はよく、食の消化を助けるといいます。寒いときには、からだが温まって陽気を補助し、汗も出さないので、これを何回も繰り返すのは害が無いということです。
何度も入浴するには、肩背には湯をかけるだけにして、垢を落とさない、下のほうはよく洗って、早く上がります。
 入浴にかかわる一般的な注意としては、次のことをあげています。 
・空腹時には、入浴してはいけない。
・満腹のときは髪を洗ってはいけない。
・熱い湯に入るのは害がある。湯加減は自分でみること。
・気持ちがいいからといって、熱い湯に入ってはいけない。気が上り、気が減るから。
・特に、目の悪い人、からだの凍えた人は熱い湯はいけない。
・入浴後は風に当たってはいけない。風に当たったら、早く手で皮膚をこすること。

3.風呂に入る期間・間隔
 入浴の基本は、あまり何度も入らぬこと、10日に1回ぐらいがいいのではないかと、言っています。何度も入ると、温気が過ぎて、肌の毛穴が開いて汗が外へ出て、気が減るからいけないといいます。
風呂に入いる間隔は、暑い夏場は別として、通常は5日に1回、頭を洗い、10日に
1度、入浴するのが昔からの入り方であり、何度も入るのは気分はいいかもしれないが、気が減るからやめなさいと、述べております。
このように入浴が、月に2、3回というのは、江戸時代の町民では、当たり前のようで、たとえば、江戸末期の小説家 曲亭馬琴は、日記に細かく入浴回数を書いておりますが、銭湯にゆくのは大体、月に2、3回です。
 益軒は、入浴にあたり、「気」を強く意識しておりますが、江戸時代の医療では当然のことです。しかし、とりわけ、『養生訓』で、これが強調されているのは、養生とは身を慎み、生命を大事にすることであり、そのためには外邪である天の気(健康を損なう外部環境)に冒されないようにと述べて、風、寒、暑、湿の気に害されることを特に要注意にしているからです。

4.温泉と湯治
 温泉は各地にあるけれども、すべての病気にいいというものではなく、病気によっては入っていけない温泉もあるので注意しなければならないと、いっております。
湯治に向いているのは外傷の治癒で、打ち身、落馬、高いところからの転落、刀傷、疥癬などの皮膚病、これらには卓効があります。また、中風、筋の引きつり、縮まり、手足の動きにくい病気は湯治には良く、内蔵の病気には温泉治療は不向きといっております。
 湯治では、体力ある病人でも、1日3度以上は浴槽に入ってはいけない。弱い人は1日、1、2度でいい、何度も温泉につかるのは良くない、湯の中でからだを温めすぎるのがいけないのです。浴槽のへりに腰掛けて、湯を柄杓でからだにかける入り方がいいそうです。
湯治の期間は1、2週間がよく、俗に、これを一巡り、二巡りといいます。
温泉の湯は毒があるから、飲んではいけません。さらに、湯治しているときは、熱性の物を食べてはいけない、大酒、大食いも駄目、房事は大変良くない、と注意しています。
 近くに温泉のない人は汲み湯といって、温泉の湯を貰って入る場合がありますが、この湯は温泉の地から湧き出した温熱の気を失っています。近くの清水を汲んで入るほうがいいのではないかと、他人の説を引用して説明しています。江戸の殿様は熱海から温泉の湯を運ばせたがという話があります。

5.薬湯の記述はない
 益軒は、この『養生訓』にて薬湯の五木八草湯を奨めていると、入浴剤業界団体のPR誌に出ておりますが、疑問です。『養生訓』にはこの記事はみつかりません。
江戸時代はじめには、他の書で薬湯の五木湯は出ています。当時の薬湯と言えば生薬の入浴剤ですので、これには今の延寿湯温泉が近いでしょう。しかし、五木湯の場合は、今日の薬湯とは配合生薬が異なります。
益軒は、一流の本草学者ですので、生薬の知識は豊富です。これらの生薬の入浴剤への利用については益軒の大著『大和本草』にて扱われております。五木湯というのは、中国由来ではないかと思います。生薬の選択が、日本独自のものと見られない一面があるからです。参考までに、五木湯に配合されている生薬は、いろいろありますが、一例は柳、桃、エンジュ、梶、桑です。

 <参考文献>
石川謙校注:養生訓・和俗童子訓(岩波文庫)、岩波書店(1961)
松田道雄訳:日本の名著 貝原益軒、中央公論社(1969)
貝原益軒著、白井光太郎校注:復刻版 大和本草、有明書房(1992)     

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【延寿通信】 2008年08月08日(金)

延寿通信 第60号 2008年8月

暑い夏、熱中症に注意。しっかり睡眠をとりましょう

入浴で快眠



延寿通信 第60号  2008年8月
熱い夏 入浴で快眠・元気を回復------

「熱中症ハイペースにご用心」(2008.7.28 朝日新聞)。今年の夏は暑さが厳しいせいか、熱中症が異常に多いと報道されております。熱中症の予防には、暑い日差しを避けて、水分をこまめに補給することですが、もう一つ大事なことは、十分の睡眠をとって体調を整えておくことです。
暑い夏の夜、とかく睡眠不足になりがちです。イライラもたまってきます。
お風呂に入って汗を流し、気分爽快。ストレスを吹き飛ばして、ぐっすり眠る。これが入浴による元気回復のコースです。入浴と睡眠の関係を本号では特集いたしますが、時節柄、はじめに熱中症に触れておきます。

1.睡眠不足と熱中症
このところ、特に多い熱中症の予防のことを取り上げますが、熱中症と入浴とは直接の関係はありません。先程の朝日新聞の記事では、予防にはとにかく水の補給と十分の睡眠が予防には欠かせないと書いてあります。
連日、報道される新聞・テレビでは、熱中症のニュースは日中の最高気温に関連して気温が37,38度と高い地域に話題が集まります。
熱中症は、ちょうど今頃のような気温・湿度の高い夏場において、風も弱く、日差しのきつい場所で発生しやすいのです。そういう環境の中にあって、もう一つの要因として挙げられるのが、体調の影響です。激しく身体を動かして熱の産生されやすい状態において、暑い環境に十分対応できるような体調になっていないと、熱中症を引き起こしやすくなります。熱中症とは熱に中(あた)ることで、体温調節機能が働かず、程度に応じて失神したり、痙攣起こしたりします。
熱中症では、体調のほかに、特定の疾患にあって、体温調節がうまく出来ない人、たとえば、心疾患、糖尿病、精神神経疾患、皮膚疾患のある場合には、引き起こす確率が高くなることがあります。また、疾患とはいわなくとも、高齢者や肥満傾向の人、普段余り運動していない人などは要注意です。
環境省では、熱中症にならないように、日常生活では次の点に注意するよう呼びかけております。
@暑さを避けましょう------日陰、日傘、帽子など
A服装にも工夫しましょう------吸水性にすぐれた下着
Bこまめに水を補給しましょう‐-----水やお茶でいいのですが、ビールは駄目
C急に暑くなる日に注意しましょう------上手に汗をかくことができるように
D個人の条件を考慮しましょう-------朝食は食べる、寝不足ではないこと、激しく動いた後には体温を効果的に下げる、安静・昼寝など
E集団活動の場では お互いに配慮しましょう-------皆が夢中にならないで監督者がいる

なお、熱中症の応急手当の一つに、患者に水をかけて冷やしたり、水風呂に入れることなどがありますが、生命に直接かかわることでもありますので、詳細は専門書におまかせいたします。

2.快い睡眠で睡眠不足を解消
暑い夏を快適に過ごすには、なによりも快眠、ぐっすり眠ることが大事です。しかし、分かっていても容易に眠気はやってきてくれません。だれも快眠は願っているものの、簡単に出来るものではありません。
それは一つには、心がけというか、日常の生活習慣にもかかわりがあり、快眠のための準備、実践には努力が要るからです。
大阪大学保健センターの足立先生は日経新聞(2008.7.29)にて、快眠のために実行すべき生活習慣をつぎのように列記されています。全部で13項目ありますので、ここでは簡略にして、引用いたします。
先生はセミナーなどで、参加者にこの13項目の快眠の実践を推奨されているのですが、確実に実行して習慣の改善をされている方の効果は大きい、と説明されておられます。
快眠にお悩みの方には13か条の実践を、ぜひお奨めします。

@毎日同じ時刻に起床する
A自分に必要な睡眠時間を見つける
B午前中に十分明るい光を浴びる
C昼寝(午後3時までに30分以内)を有効活用する
D適度の運動を毎日する
E就寝直前まで仕事、勉強をしない
F夕方以降カフェイン類、たばこは控える
G就寝時にくよくよ考え事をしない
H就眠直前に熱い風呂には入らない
I寝酒はしない
J寝る環境を整える
K無理に寝ようとしない
L眠れないときに、時計を見過ぎない

3.快眠と入浴
ここで、特に強調したかったのは、快く眠るための入浴の方法です。
入眠の工夫の基本は体温を上げることにあると、『快適睡眠のすすめ』(岩波新書)の著者 堀忠雄さんは強調されています。寝つきが良くなるということは体温が下がってゆくときであり、逆に体温が上がってゆくときにはなかなか寝付けないといいます。赤ちゃんが寝る前に手足の温かくなるのは、血液を体の表面にまわして、脳の奥の温度を下げているためだそうです。
これは、大人では簡単には出来ません。というのは、大人の場合、睡眠に悩むようになると、どうしてもストレスがたまってきて、血管は収縮して末梢の血流は流れが悪くなります。赤ちゃんの場合とは逆で、体表面は冷えてきております。したがって、大人では、寝る前に体温を上げておいて、次第に熱の下がる過程を利用して、眠りつけようということになります。
体温を上げる手っ取り早い方法が入浴です。風呂に入ると、体の表面から温度は上がってきますので、表面の血流は良くなり、内部の血液は外に向かって流れてきます。
ここで、熱い湯に入ることは厳禁です。先の快眠13か条にもありました。熱い湯は交感神経を興奮させますので、眠れるどころではありません。ぬる目の湯に入ると、副交感神経が興奮しますので、心は穏やかになってきます。内部の血液を体の表面に向けて循環させて、放熱します。
入浴後10~15分ぐらいで汗を引かせ、体温が下がってくるころに横になると、眠りに入りやすくなる状態になります。もっとも、このあたりの時間、ころあいは季節によっても、個人によっても、かなり事情は異なってきますので、最適の方法を見つけることが求められます。
風呂に入るタイミングは寝る前か、そのずっと前、夕食前とがありますが、寝る直前に入る場合はぬる目に、大分時間のあく場合は熱い湯でもかまわないといいます。
先程の13か条では適度の運動という項目がありましたが、運動と入浴を組み合わせるのが効果的であり、運動後2時間ほどしてから、ぬる目の風呂に入り、一汗かいてから、横になるのが理想的であると、先の堀さんは述べておられます。
就寝時に眠りにくよくよするわだかまりを除くために、ぬる目の湯にのんびり漬かり、そのとき読書をしたり、ラジオを軽く聴いてイライラを排除する、という入浴の方法がありますが、たしかに、これはくよくよ除去には効果があります。
 ぬる目の湯に、のんびり漬かる、それだけでも十分、心身は和らぎますが、もっとこれを積極的にやってみようという場合に登場するのがアロマセラピー、芳香系生薬の配合されている入浴剤を使用することです。
ストレスがたまらないようにするには、あるいは過多になったストレスを除くには、食事と運動と睡眠が特に大事であるといわれております。ここでも睡眠が浮かび上がってくるのですが、ストレス発散と入浴については、膨大な内容になりますので、改めて特集することにいたします。
これまでも、入浴剤の香りによって心身を爽快にする効果として、生薬入浴剤 延寿湯温泉によるストレス解消はたびたび取り上げてきました。本剤には龍脳やリョウキョウはじめ芳香性生薬を種々配合しているので、お得意の領域です。どうぞお試しください。
 


  
<参考文献>
理化学研究所脳科学総合センター:脳研究の最前線、講談社(2007年)
環境省:熱中症環境保健マニュアル 2008年6月改訂版
堀忠雄:快適睡眠のすすめ、岩波書店(2000年)

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【延寿通信】 2008年07月04日(金)

延寿通信 第59号 2008年7月

紫外線のきつい季節となりました

紫外線から皮膚を守りましょう

延寿通信 第59号  2008年7月
夏場の皮膚のいたわり------日焼けと紫外線

 夏休みの終わったあと、子供たちの真っ黒に日焼けした姿が、かつては野外活動に活発な子供の健康の象徴でもありましたが、最近では紫外線照射に無防備であるという見地から、必ずしもお奨めできる姿にはなっていないようです。
 このところ、紫外線をいかに遮るかということが結構話題になっており、それに関連した商品も増加してきております。
 紫外線が、結構、悪者扱いされていること、さらに、世の中、原油高のために、車で冷房して出かけるのが、やや厳しくなりつつあるせいでしょうか、紫外線防止の関心は高まっております。
 入浴剤と石鹸は、清潔で健康な皮膚を守るために、欠かせませんが、紫外線防御には直接の関係はありません。健康な皮膚を守るという立場で、今回の中味をご覧いただければと、思います。

1.日焼けするのは皮膚を紫外線から守るため ――紫外線の皮膚への影響
 今日では、日焼けして真っ黒になるというのを、健康的であるとはいいません。日焼けするというのは、紫外線による皮膚への影響を少しでも減らすための一種の皮膚の防衛反応であります。
 紫外線に当たって日焼けするとなぜ、皮膚は黒くなるのかということは、まだ最終的な答えは出ていないのですが、かなり絞られてきてはいるようです。皮膚の色を決めているのはメラノサイトという細胞の一種で、メラノサイトは、紫外線の照射から守るために、メラニン色素をつくります。メラニンという用語はギリシヤ語の「黒」という言葉から来ておりますが、通常は黒い色素であり、黒人の皮膚にはこの色素が多いのであり、日焼けの肌にもメラニン色素は増加します。元来、メラニン色素は、紫外線のように皮膚の細胞を破壊する外部の悪者から、守るためにあるものです。皮膚の細胞を破壊するとは、DNAの破壊であり、放射線照射の場合と同様な現象で、程度によっては発ガンにつながります。本来のヒトの生命安全のために、日光の強い地域では、黒人の肌のようにメラニン色素を増やして皮膚を守らないと、皮膚ガンになることがあり、東洋系にくらべ、メラニン色素の少ない白人はしばしば、皮膚ガンに冒されます。
日焼けで皮膚が黒くなるのは、紫外線が皮膚を黒くするのではなく、細胞を紫外線によって破壊されないよう、すなわち、ガンにならないように、メラニン色素が必死になって皮膚を紫外線から守ってくれている結果であり、決して健康な状態ではないということを認識しないといけません。
 日焼けというのは、厳密には2種類あって、欧米ではサンバーンとサンタンに分けています。サンバーンというのは、ちょっと日に当たると皮膚が赤くなって、風呂にでも入るとひりひり痛い状態です。これは2,3日で治まります。ところが、サンタンというのは、冒頭にあげた俗に言うクロンボ大会の皮膚で、痛みの伴わない長く続く皮膚の黒い状態です。サンタンは皮膚にメラニン色素の沈着した場合ですので、簡単に色は消えません。

2.紫外線とは何か
 紫外線は(UV=Ultra Violet)とも呼ばれ、マスコミではUV(ユーブイ)のほうが一般的なのか、よく使われます。紫外線はヒトの目では見えない光線の一つです。ヒトの目と断わったのは、昆虫であれば、たとえばモンシロチョウであれば紫外線は見えるからです。
 日光をプリズムに通すと七色に分かれて、いわゆる虹の七色ができます。その端は紫と赤色で、紫の色の外側に紫外線は位置します。紫外線ランプというと微生物の殺菌用に使われていることからも分かるように、強力な細胞破壊力を持っております。
 紫外線は太陽光の一つですので性質は、太陽光に従います。日陰に入れば紫外線は減り、部屋の中では外の10%ぐらいになります。また、太陽が直射ではなく、うす雲があれば、減ります。また、太陽に近くなると、量は増加し標高1000mについて10〜20%増加してゆきます。登山や、高原ではご注意ください。また、光ですから反射もします。新雪では80%反射するというので、スキーをするときにはサングラスをかけます。雪ばかりではなく、舗装道路や水面でも反射して目に入ってきます。
 紫外線は太陽との距離が短くなるほど照射は大きく、季節では日本の場合、6月〜8月に最大となり、1日のうちでは正午前後がもっとも大きくなります。
 地球の上空はるかかなたにオゾン層というのがあって、オゾン層は紫外線が直接降り注ぐのを防いでおります。ヒトを始め地球の生物にとっては大事な大事なオゾン層なのですが、この層はフロンガスによって冒されて、穴が開いてしまいます。穴があくと、そこから紫外線が流れ込み地球にやってきます。スプレイやエアコンに使われていたフロンガスは、このオゾン層を破壊する作用があるために、今では世界各地で使用禁止になっております。

3.紫外線照射で受ける被害
 紫外線の照射による被害では、生活面であるいは生態系、農業生産など、いろんな分野で悪影響が出てきます。たとえば、医薬品の保存管理でも「遮光して涼しい場所に保管」とか「直射日光には当てないようにしてください」など注意事項が表示されております。
 医薬品の光への影響は、そのほとんどが紫外線による中味の化学変化(劣化)を心配しているからです。
 健康への被害は少なくありません。先にも書きましたが、被害を受けてからの治療よりも予防が大事です。しかし、不幸にして紫外線を浴びすぎたきには、主として皮膚と目に悪い疾患が出てきます。紫外線に関係する病気は軽いものばかりとはいえません。
 このような疾患に移行したときは早めに専門の医師の治療を受けることになります。
健康への被害では、環境省の報告では、次のように急性と慢性にわけて疾患を挙げております。
  急性:日焼け(サンバーン)、雪目、免疫機能低下
  慢性:皮膚の場合
   しわ、しみ(老人斑)、良性腫瘍、前がん症状、皮膚がん
  慢性:目の場合
   白内障、翼状片(眼疾患の一つ)
 マイナスばかり挙げましたが、プラス面ではビタミンDの産生を促し、骨の発育にいいといわれています。日照に乏しい地域によっては、骨の発育異常があり、小児のくる病というのが以前、問題になっていましたが、ビタミンDも普及し、最近では激減しているようです。

4.紫外線照射から守る方法
 紫外線は光の一種ですから、光線を避けると同じようにすればいいのです。目を保護する場合、真っ暗にはできませんので、サングラスあるいはUVカットの眼鏡を使うと、目は保護されます。また、日傘でも、日光は遮断はしますが、UVカットの布地によるものが、紫外線には一層効果的です。
 以前は赤ちゃんの日光浴が推奨されていましたが、今では、デリケートな赤ちゃんの皮膚を紫外線から守るために、日傘のなかで、全身を薄着で包んで、直射日光に曝すことのないようにして外気浴させるようにと改められております。
 日焼けしてから、治療するのではなく、紫外線には当たらないように、防止に努めるのが肝心であり、環境省では次のような対策を推奨しております。
@外へ出かけるときには紫外線の強い時間帯を避ける
A日陰を利用する。ただし、日陰でも、散乱してくる紫外線はありますので、ゼロではありません。
B日傘を使う、帽子をかぶる。帽子はつばの広いのがお奨めです。
C衣服で覆う。首や腕、肩などの保護を考えて体を覆う部分の多い、木綿製品がいいようです。
Dサングラスをかける。紫外線防止効果の性能のはっきりしたものが必要です。
 色の濃いサングラスは瞳孔が大きく開くので、UVカット効果が小さいとかえって紫外線の被害は大きくなりますので要注意です。
E日焼け止めクリームを上手に使う。
気象庁ではインターネットで毎日、全国の紫外線量の情報を発表しており、このデータを読めば、紫外線が多いのか少ないのかが分かります。どうぞ予防にご利用ください。
 
化粧石鹸の「延寿石けん」は、薬用ではありませんので治療というよりも、化学薬品無添加の刺激が少ないという特徴を生かして、日焼けの起きた皮膚をいたわりつつご使用いただければと思います。
          
<参考文献>
田上八朗:皮膚の医学、中央公論新社(1999年)
環境省:紫外線保健指導マニュアル 2006年版
気象庁:紫外線に関するミニ知識(ホームページ)


Posted by 管理者 at 15時57分   パーマリンク

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