【延寿通信】 2008年12月04日(木)

延寿通信 第64号 2008年12月

あなたのお風呂の湯は酸性?アルカリ性?

ー風呂の湯と酸性、アルカリ性

アルカリ性と酸性 

レモンや酢のすっぱいのは酸性であるから、ということはご存知と思います。このように液体では、水溶液としての基本的な性格として、アルカリ性とか、酸性という性質をあらわす言葉が、常に付きまといます。
水溶液というのは、水にある物質を溶かしたり、水が主体になった液体のことをいいます。水溶液でない場合は油であったり、あるいはアルコール溶液と呼ばれたりします。水溶液がアルカリ性とか、酸性とかで分けられるのは、ちょうど、生物、特に動物などでオス、メスが話題になるようなものでしょう。オス、メスである程度、性質の類推ができるように、アルカリ性とか、酸性とかで水溶液に独特の性質が現れ、液の性状、挙動を理解することができます。
アルカリ性とか、酸性というのは健康な暮らしに大きな影響を与えております。最近は酸性の飲料は歯を溶かすから、寝る前にはきちんと歯を磨いて、口中に酸性物質を残さないようにといわれております。
アルカリ性とか、酸性というのを、「酸と塩基(えんき)」ともいいます。このアルカリ性とか、酸性の性状を表すのが水素イオンであり、その濃度によって性状が決まり、中間には中性というのがあります。
この水素イオン濃度を表す数字をペーハー(pH)、最近はピーエイチといいます。一番手身近な呼称はピーエイチ(pH)かもしれません。ここではピーエイチ(pH)を使うことにしましょう。入浴の際の風呂の湯のピーエイチ(pH)すなわち、浴槽の液体がアルカリ性か、酸性かというのは、重大な影響とはいわないにしても、少なからず身体の皮膚に影響を与えます。とくに、温泉では泉質といいますが、泉質の皮膚への影響は、無視できないものがあります。

1.浴槽の湯はどちらか
銭湯の場合、浴槽の湯はpH5.8〜8.6 と法律で定められております。これは、プールの場合も同様です。家庭の風呂は通常は水道水を使いますので、水道水のデータになりますが、水道水の厚生労働省の基準はpH5.8〜8.6ですので、浴槽の湯と同じです。この数字はややアルカリよりですが、性質は中性です。 
水道水の基準は国の定めた範囲内にありますが、実際の水道水の水質検査の結果では全般的にやや、アルカリよりになっております。たとえば、大阪市の場合はpH7.5であり、堺市のデータもpH7.5程度になっております。数字の上ではアルカリ性でも、実態はむしろ中性という方がいいでしょう。この程度のpHでは中性ですので、身体への影響はありません。
日本各地の水道水の水質は、地方自治体によってそれぞれ国の規定の範囲内で定められているので、実態では中性でも数字ではやや酸性に傾いている地方もあることと思います。
 この浴槽に入浴剤を入れたら、ということは最後にまとめておきます。

2.温泉の場合
 温泉は銭湯とは異なり、酸性、アルカリ性の湯があるのは当たり前で、さまざまです。それを選べるのが温泉の良さでもあります。温泉では湯の分析書が表示されておりますので、泉質がどういう性質かは理解しやすいでしょう。温泉の泉質を分析することは法律で定められており、その性質によって温泉を単純温泉、炭酸水素温泉,塩化温泉ほかに分けられます。なお、ここでは、pHの細かい規定はありませんが、療養泉の場合、pH8.5以上の単純温泉をとくにアルカリ性単純温泉といい、水素イオンが1kg中に1mg含まれる場合を酸性泉と名づけおります。
これらのアルカリ温泉、酸性泉に限ってpHが示されているのは温泉療養で泉質の影響がとりわけ大きいからといわれております。
これは法律そのものではありませんが、鉱泉分析法指針ではアルカリ性の温泉、酸性の温泉というのを、指針ではpHの数字で次のように分類しております。
酸性温泉:pH3未満、 弱酸性温泉:pH3以上6未満、 中性:pH6以上7.5未満
弱アルカリ性温泉:pH7.5以上8.5未満、アルカリ性温泉:pH8.5以上
アルカリ性の温泉の場合、湯にすこし入っていると身体中に泡の粒のような気泡がびっしり付着して、肌がつるつるしてくるといいます。肌がつるつる、あるいはぬるぬるしてくるというのはアルカリ性の一つの特徴です。味はやや渋く、酸性ほどはっきりした味はありません。
酸性の強い温泉は火山地帯にあって場所は限られておりますが、湯によって金属が冒されるので、設備の保全が要注意になっております。日本一の強酸性温泉は秋田県の玉川温泉です、草津温泉も酸性温泉です。
アルカリ性の温泉は酸性温泉よりも多いのですが、金属と接触しても穏やかで金属を冒すということはありません。今、問題になっているのは、アルカリ性の温泉が増加しているにかかわらず、本来のアルカリ温泉の特徴である、肌のツルツル感が減少し、肌で分からなくなってきているということです。

3.からだにどういう影響を与えるか
 酸性飲料は歯を溶かすとか、あるいはアルカリ性は皮膚の角質を軟化するので、皮膚のすべすべ感、つるつるとした感じ、あるいは洗浄作用があるとか、いいます。
 入浴では問題になりませんが、万一、強い酸性やアルカリ性が皮膚に接触すれば、皮膚に炎症を起こす場合があるので、皮膚についたときはただちに水洗いをするという処置が要ります。
酸性とか、アルカリ性というのはあくまでも、水素イオン濃度の問題であり、化学の世界ではほんの一部の現象であって、実際にはイオンそのものの動きに注目しなければなりません。人体の胃における消化、血中を移動する物質、神経細胞の信号伝達あるいは薬の効き目、安全性などは、すべてイオンの動きで働いております。
 このイオンの動きとなると、話が複雑になりますので、ここでは、酸性、アルカリ性に話題を絞ります。
ビールやワインは酸性飲料です。そのほかの食品、家庭用品、人体の体液のpHをみてみましょう。
胃液:pH 1.0、酢:pH 2.0、レモン・リンゴ:pH 2.5、みかん:pH 3.5、
醤油:pH 4.0、コーヒー:pH 5.0、牛乳:pH 6.5、血液:pH 7.5、涙:pH 8.5、
せっけん:pH 9.5
 食品の世界では、アルカリ性食品とか酸性食品とかが話題になり、血液がアルカリ性だから、アルカリ食品の摂取が望ましいという俗説があります。参考までに、この説には科学的な根拠がないと言われております。
 食品の酸性、アルカリ性というのは、そのまま水溶液の状態で測定したものではなく、食品を燃焼して、その灰の水溶液の水素イオン濃度を測定結果で決めます。だから、すっぱいものがすべて酸性食品かというとそうではありません。酸性食品には肉類、卵、米など、アルカリ性食品にはニンジン、ほうれん草、レモン、梅干などがあります。

4.アルカリ性とか、酸性というのは化学的にはどういう意味なのか
 厳密にはピーエイチ(pH)というのは水素イオン濃度の濃さを表す尺度で、アルカリ性か、酸性の度合いを示す数字です。
料理に使う塩(しお)は水に溶かすとナトリウムイオンと塩素イオンに分かれます。イオンとは原子が電気的にプラス、あるいはマイナスの状態になることで、どちらになるかは原子によってこれは決まっております。化学反応の多くは、電気的に原子がイオンの状態になってはじめて起こります。イオンには電気的に、それぞれくっつきやすい性質や、逆に反発する性質を帯びております。
 たとえば、入浴剤 延寿湯温泉を浴槽の風呂の湯に入れると、もともと中性であった湯に、成分の一つである炭酸ナトリウムの炭酸イオンというマイナスイオンとナトリウムのプラスイオンが湯の中に放出されて、炭酸イオンの優位な湯はアルカリ性になります。これが皮膚にいい影響を与えるのですが、その反面、たまたま、浴槽が大理石であると、アルカリ性の溶液は大理石の表面を冒し、光沢を奪う性質がありますので、大理石にはアルカリ性である入浴剤は禁物です。
 塩素系のカビとり剤に、酸性の洗剤を混ぜるのは危険です。実際にはトイレ掃除用の強酸タイプの洗剤との接触が危険なのですが、酸とアルカリとが反応して有毒な塩化水素ガスを発生させます。入浴剤を使って、浴槽に炭酸カルシウムの結晶がついたときには、クエン酸や、酢などの弱い酸性の洗剤の使用をお奨めしますが、このときは、念のため、塩素系のカビとり剤とは混ぜないようにします。酸とアルカリとの反応は中和反応といい、その状態は、ケースバイケースで、穏やかな場合、あるいは激しい場合もあります。
 ピーエイチ(pH)というのは水素イオン濃度であるといいました。この濃度の測定方法
には、試験紙による方法はじめ指示薬、測定器によるなどいろいろあります。酸性・アルカリ性の最も簡単な判定に使われのはリトマス試験紙です。青い試験紙が、赤くなると酸性で、アルカリ性は赤い試験紙が青くなります。
 アルカリ性、酸性では強い、弱いということがよく出てきます。強酸、弱酸などですが、
この強い弱いは、水素イオン濃度で決まりますが、強、弱は一般には慣習で使われます。家庭用品品質表示法では、次のように段階を定めており、これらの用語は市販の家庭用
洗剤などに表示されています。
pH 3未満:酸性、 pH 3以上6未満:弱酸性、 pH 6以上8以下:中性、
pH 8以上11未満:弱アルカリ性、 pH 11以上:アルカリ性
 化学の世界でイオンの動きを最初に利用したのは電池で、1800年ごろイタリアの科学者ボルタが発見しております。電池はその後、どんどん発展しておりますが、基本原理は変わりません。いまなお、二酸化マンガン電池やリチウム電池、あるいは自動車に使われているバッテリーなど、それぞれイオンの働きが利用されております。

5.入浴剤をいれたら
 さる11月27日、朝日新聞は硫黄含有の入浴剤(610ハップ=ムトウハップ)が硫化水素自殺に使われるので、薬局での販売自粛が響いて売上げが激減した結果、メーカーは販売中止を決定したと報じています。この入浴剤は1927年に発売され、唯一の医薬品の入浴剤でありました。それと、注目すべきことは強い酸性であり、金属を冒すので要注意という製剤でもあり、入浴剤で強い酸性と言うのは珍しいことでした。
 入浴剤は通常はアルカリ性です。もちろん、延寿湯温泉も浴槽にいれるとアルカリ性で、pHは10ぐらいです。これは化粧石鹸で洗顔するときの水溶液とほぼ同じです。
温泉のところで取り上げましたように、アルカリ性というのは洗浄効果がありますし、皮膚からの吸収を助ける役割もあります。
入浴剤の残り液を洗濯用に使うことは、アルカリ性でも洗剤の洗浄力には影響与えないので、通常は差し支えないのですが、入浴剤の色が衣類に移ることはありえます。これは要注意で、十分、水道水ですすぐことが必要です。延寿湯温泉の場合は、生薬をそのまま使っておりますので、残り湯の利用は着色の心配があり、お奨めできません。
 浴槽や風呂釜への影響は、延寿湯温泉も含めて、アルカリ性の入浴剤であれば、通常は金属を冒すという問題は発生しません。逆にアルカリ性は金属の洗浄に役立ちます。
 強酸性や強アルカリ性ですと、金属が冒される以前に、人体に影響が出てきます。そういうことは、よほどの敏感な皮膚でない限り問題はありません。入浴剤は化粧石鹸と同程度のpHですので、化粧石鹸が使えるのであれば、アルカリ性の影響は心配なしとみていいでしょう。



 
<参考文献>
水谷仁編集:イオンと元素、ニュートン別冊、株式会社ニュートンプレス、東京(2007)
石川理夫:温泉の法則、集英社、東京(2003)
浴用剤工業会:入浴剤ハンドブック、東京(1993)
朝日新聞:2008年11月27日号(2008年)

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【延寿通信】 2008年10月31日(金)

延寿通信 第63号 2008年11月

NHK教育TVで放映された銭湯史のあらまし

NHKで銭湯の歴史「あ〜 極楽の銭湯史」 教育TVで10月に放映 

銭湯とは庶民の娯楽施設であった、というのが、この銭湯史の訴えるところです。歴史ですので過去形にしましたが、現在もなお、銭湯は娯楽施設か、といわれたら、大部分の庶民は、それを否定されるでしょう。もちろん、銭湯は疲れを癒すありがたい施設には違いないのですが、むしろ、娯楽の場というか、リクレーションの場に傾いていっているのは、一部の温泉であり、スーパー銭湯です。入浴というものは銭湯はともかく、自宅であっても、どこの場で行われようとも、暮らしにおける楽しみであることには間違いなく、各自がいろいろのスタイルで入浴を楽しんでおられます。
風呂の歴史、銭湯の歴史そして江戸時代の風呂の話などは本欄では、たびたび取り上げてきました。またまた、同じような内容ですが、NHKにて銭湯史が取り上げられましたので、NHKさんのお話も聞いてみてください。
今回は、NHKで紹介された銭湯の歴史のさわりの部分をご紹介いたしましょう。
この番組は、10月に4回にわたり教育テレビ「NHK知るを楽しむ----歴史に好奇心」というシリーズで放映されました。語り手は庶民文化研究家の町田忍さんです。
 
1.風呂の始まりは仏教から
「日本人とって、『風呂に入る』という行為は、時には医療行為であり、同時に宗教的な行為であり、何より生きながらにして極楽を感じる楽しみであった」これが、語り手 町田さんの銭湯史のテキスト、冒頭の一節です。
銭湯を語るには、まずわが国の風呂の発生というか、日常の行事として、どこでどのように沐浴がおこなわれ始めたかを、論じなければなりません。町田さんは、これを仏教伝来以前からわが国で行われていた宗教行事の禊(みそぎ)に結び付けております。
禊というのは、ご存知のように、今日でも神事などで行われております。禊は罪や穢れを払うために、水を浴びて身を清めることをいうのですが、神道行事だけでなく、普段の暮らしの場でも、斎戒沐浴と言って、ときたま身を清める行為の見られることがあります。
現存する東大寺の大湯屋、鉄湯船は1197年の建造で、常に風呂の歴史には登場します。奈良時代の昔ですが、宗教行事として入浴にかかわっていた東大寺の僧侶たちは、庶民に風呂、入浴の文化を広めました。
寺院の風呂だけでなく、各地の温泉も始めは宗教との結びつきがあったようです。
さらに、入浴と治療とのつながりは、奈良時代、光明皇后の法華寺施浴の話が出てきます。宗教、医療、風呂というのは、もともと深いつながりがありますので、このあたりの話は理解しやすいのではないかと思います。

2.江戸で開花-------銭湯の普及
 宗教行事であった施浴という入浴が、寺院から独立して庶民相手の商売として発展したのが銭湯であり、それは江戸時代のことで、初めは京都で、そして大発展したのが江戸であるというのが、語りのストーリィです。
 東京の日本銀行本店前、銭瓶橋跡には、現在、銭湯発祥の地という案内標識が立っており、それは天正19年(1591年)、伊勢出身の与市によるといいます。
 番組では、江戸時代の銭湯の建物、風呂の構造が、模型で詳しく紹介されました。特に、銭湯では石榴口(ざくろ)という、湯の冷めるのを防止する構造が実物模型で示され、参考になりました。石榴口というのは江戸時代銭湯の構造上の特徴で、語源は、ザクロという酸性の果実で金属の鏡を磨いたためで、「かがみいる」という言葉からといいます。
 慶長19年(1614年)のころ、江戸には約500軒の銭湯がありました。江戸にはじめて銭湯ができて、わずか25年たっているだけですので、早い普及には驚きます。
江戸時代の銭湯では、入浴のマナーが結構行き渡っていたようです。裸の付き合いでは、皆、平等ということで、上下の差別はありません、それだけに余計にお互いに気を遣い、マナーが浸透したのでしょう。しかし、石鹸代わりのヌカや、塗り薬などが洗い場に散乱して木製の床はぬるぬるして歩きにくく、暗いうえに衛生環境も良くなかったといいます。
江戸時代の風呂は熱めであり、その習慣は今日も続いており、日本の現在の銭湯の平均温度は40度ですが、東京は42度であると町田さんは調査結果を述べております。江戸では、結構肉体労働の人が銭湯を愛用していたので、この人たちは筋肉の疲れをとるのに、比較的熱い湯を好んだからだという話が出てきます。
江戸時代には、銭湯の2階は、娯楽の場所として道具が揃っており、飲んだり食ったりもでき、サービスする女性もここにはいたため、風呂の後の楽しみは尽きなかったようです。ただし、この風潮の盛んなのは江戸時代限りで、明治になって衰退します。
 
3.文明開化と銭湯-------明治維新のころ
 1881年(明治14年)には東京の銭湯は1021軒あり、ますます繁盛します。
銭湯の建物は独特で、宮造りの豪華なつくりで有名であり、現在も少なからず残っており、テレビ放送ということもあって、建物の紹介は見ものでした。珍しい建物や、凝った内装などが次々と出てくるのはこの番組の特徴の一つでした。
 明治になってから、銭湯では風紀上の問題、衛生面が重視され、江戸時代とは大きく転換します。そこに豪華な建物が加わり、明治時代なりに大きく発展します。宮造りというのは東京独特のスタイルだそうです。何ゆえ、銭湯の建物が宮造りの豪華な雰囲気にあるのか、それは理解しがたいところでしたが、一説には、この傾向は関東大震災以降で、震災で沈んだ市民の気持ちを守り立てるためといいます。
この時期、東京では銭湯の管理は警視庁が受け持ち、第2次世界大戦までは銭湯の取り締まりは警察が担当しました。こういう仕事を警察が担当するというのは明治では珍しくなく、医薬品の営業、薬局の管理、市民の衛生も、かつては警察が行っておりました。 
警察の取り締まりは厳しく、2階の娯楽施設は、この時期、風紀上の問題で禁止され、また、石榴口、混浴の禁止なども相次いで禁止令が出ました。衛生上、風紀上の取り締まりが行われる一方、このころ、銭湯の構造近代化はすすみ、「改良風呂」とか、「温泉式風呂」も登場しました。明るく、床も滑らない材料がつかわれ、衛生的だけでなく、客への配慮、サービスが向上しました。
銭湯2階の娯楽場の様子は次第に自粛されてはゆくものの、かなり広く、梯子で2階に上がると、2階番として女性が高い位置におり、茶酌女という女性が数名いて、男性客の相手をしておりました。梅か牡丹か月花のような色っぽい美しい女性ばかりであったといいます。この時期を過ぎても、まだ2階は使われて、一部には残っていました。
 当時の銭湯の湯槽は、縦横3m、深さ1.2mで、十分肩まで浸かり、流し場は4mx6mで、
男女は別々になっていました。江戸時代の混浴は明治維新で厳禁になりましたが、全国一律ではなく、秋田県は1900年に混浴禁止令が出ているので、日本中に混浴禁止が徹底するまでに30年かかっております。
 
4.昭和になって-------銭湯の完成
 銭湯の構造は大体、明治の時期に出来上がりますが、都会人の出現は銭湯を、合理的な、衛生的な浴場に生まれ変えさせてゆきます。ガラスやタイルもふんだんに使われ、モダンな洋風の内部、構造が、主力になっては来るものの、一方では、豪華な浴室や千人風呂、ローマ風呂など工夫を凝らした大規模な施設も現れます。
 特に、この時期、強調されているのは浴槽付近のペンキ絵です。例の富士山の絵が紹介されます。もう一つ、江戸時代からの引き継ぎで広告の張り出しがあります。銭湯の広告は江戸時代から華々しく、薬を始め化粧品あるいは寄席など、庶民へのPRはところ狭ましと広告が並びました。この宣伝の場としての銭湯は、昭和になっても行われました。たとえば、洗い桶を使った薬、ケロリンの広告は長く続きました。
楽しみの場という伝統は生かされますが、次第に娯楽性は薄らいでゆきます。建物を豪華にして客を呼び、目を楽しませるということには銭湯の経営者は熱心で、昭和になっても、天井の高い脱衣場、富士山のペンキ絵など構造・内装にも華々しい展開がありました。   
京都の銭湯では輸入タイルも使われ、すばらしいデザイン・色彩は、見ものでした。輸入タイルを貼りめぐらせた豪華な浴場は、今は喫茶店になっているようです。
 脱衣場の施設というか、客へのサービス付属物では、以前から体重計はどこにでも見られましたが、昭和30年代になると、マッサージ器を置いたり、冷蔵庫が設置されたりで、コーヒー牛乳やフルーツ牛乳が銭湯の人気商品になりました。
 番台というのは、銭湯の重要な場所・役目であり、江戸時代から連綿と今日まで続いております。銭湯に入ってくる客に背を向けているので、外国人には奇妙な存在だそうですが、ご承知のように番台は、銭湯のカナメであって、入浴料金を受け取り、客の安全管理、荷物の見張りなど、大事な仕事を受け持っております。経営者あるいは、身内の方がこの役目を担う場合が多いようです。
 銭湯の入浴料金について、番組のテキストには江戸時代から今日までの詳細な表が出ています。その中から、かいつまんで列記します。この数字は東京都の場合で、成人1回の入浴料金です。この数字で見ると、今の料金は明治初めの3万倍ということになります。物価の一般的な傾向としては、比率では安くはないといえます。
 
1870年 1銭5厘
1925年 5銭
1945年 20銭
1960年 17円
1980年 155円
2008年 450円

 この番組の銭湯は東京中心でしたが、テキストには大阪、京都の銭湯のことが若干出てきます。とくに大阪の銭湯は客へのサービスが良く、泡風呂や薬風呂などの導入が早かったという記事が出てきます。薬風呂については、江戸時代の銭湯経営者は関心大でしたが、本番組では深くは触れていません。そういうわけで今回は入浴剤 延寿湯温泉の出番がありませんでした。
 
<参考文献>
町田 忍:NHK 知るを楽しむ 歴史に好奇心「あ〜極楽の銭湯史」、日本放送出版協会(2008年)

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【延寿通信】 2008年10月02日(木)

延寿通信 第62号 2008年10月

来春から一般用医薬品の販売制度が大きく変わります

「ファミマ、大衆薬販売に参入」(日経 2008.10.1)と日経新聞は大きく取り上げております。ファミリーマートが、2011年度までに全国100〜150店で、一般用医薬品の販売に参入するという記事です。これは、来春施行の改正薬事法による規制緩和をにらんでのコンビニの動きで、他に家電製品販売の大手も参入の計画中といいます。ドラッグストアを交えた価格競争が激しくなりそうだと、同紙は報じています。
 もうすでにこの動きはご存知かと思いますが、厚生労働省は着々と体制作りをしており、
さる9月末、関係法令につき一般からの意見を募集するため、その内容が公開されました。
 一般用医薬品というと、薬局やドラッグストア、あるいは薬店で一般の人が購入する医薬品を言うのですが、一般用医薬品にとっては薬事法制定以来の大規模な変更です。今回は冒頭に紹介した、医薬品販売制度の変更のあらましをご説明いたします。
 これらの法律の施行は来年2009年6月1日が予定されており、現段階で制度のすべてが出揃ったのではありません。あらかじめ、お断りしておきますが、ここで紹介する改正規則・省令案の内容は、まだ決定していない部分があるため、来春、施行の際には変更している箇所の出る可能性はあります。
 なお、この法改正では医薬部外品も含まれておりますが、延寿湯温泉はじめ医薬部外品の浴用剤は、法的位置づけ・包装の表示・販売方法は特に変更はありません。ただし、浴用剤以外の一部の医薬部外品には変更があります。
 詳細・確認のためには厚生労働省の「一般用医薬品販売制度ホームページ」をご覧ください

1.改正の趣旨
 今回、大幅に制度の改正が行われたその趣旨は、一般用の医薬品を対象として、これらの医薬品使用の危険度の大きさに応じて、情報が的確に購入者に伝わるようにというのであります。いわゆる使用の適正化というか、医薬品の安全性を、より高めるための措置です。
 一方では、背景の一つに医薬品がもっと消費者に手軽に手元に届くようにという消費者への便益と、販売制度の規制緩和ということもあります。薬局以外のコンビニやスーパーなどで、どこでも、いつでも一般用の医薬品が入手できるようになります。これらの店では薬剤師を常駐させなくてもよくなるのです。
 また、最近増加してきているインターネットによる販売も対象となる医薬品が指定されました。リスクの少ない医薬品が実施できる対象として、法で明文化されました。逆に、リスクの高い医薬品は禁止となり、明確に一線が引かれました。

2.一般用医薬品は4つの区分に分けられる
 一般用医薬品は使用に際し、危険の程度の高さに応じて、リスク区分が設定されました。
区分は危険度の特に高いほうから低いほうに向かって
「第1類医薬品」
「指定第2類医薬品」
「第2類医薬品」
「第3類医薬品」と、4つの段階に分けられています。
この危険度に応じて、販売時に、販売者が客に情報を与えるのですが、危険度の高い
「第1類医薬品」については薬剤師が直接説明することになっております。比較的危険度の高い「第2類医薬品」、一番危険度の低い「第3類医薬品」については、薬剤師ではなく、新たに制定された登録販売者が販売できます。それぞれ程度に応じて説明はなされますが、「第3類医薬品」については、要求が無ければ、説明は無くてもいいことになっています。これらの区分された医薬品は、それぞれ区分ごとに分けて陳列することになっております。
 特に、危険度の高い「第1類医薬品」と「指定第2類医薬品」は、客が直接、手の触れる場所には置いてはいけないことになっております
 どういう薬が「第1類医薬品」で、何が「第2類医薬品」かという区別は、法律で定められて指定されており、別に一覧表が公開されております。また、商品包装の表示には、この区分が明記されますので、購入の際に確かめることができます。品目数では、大部分が「第2類医薬品」と「第3類医薬品」であり、漢方、生薬類もほとんどが、この「第2類医薬品」か、「第3類医薬品」に指定されております。通信販売ができるのは、この中の
「第3類医薬品」のみです。

3.登録販売業という新しい業態-----消えてゆく薬種商
 先に、登録販売者という名称を書きましたが、これは今回、新しく定められた資格です。
すでに府県別に資格試験の第一回は実施され、一部の地域では合格者も発表されております。
 登録販売者の従事する店が登録販売業です。
 登録販売業の登場は今回の制度改革の目玉の一つで、店舗販売業の中に含まれます。店舗販売業というのも、今回の新しく生まれた名称で、ここには、現行の一般販売業、薬種商などが包含されます。これまでなじみの深かった薬種商、特例販売業という名前は消えてゆきます。
 薬局は従来と同様に存続します。処方箋調剤が主たる仕事になりますが、一般用医薬品はすべてを扱うことができます。
 したがって新制度では、販売業態は、薬局、店舗販売業、配置販売業の3種になります。
 一般用医薬品の販売は薬局、店舗販売業と配置販売業に限定されます。配置販売業の取り扱うことのできる医薬品は別に指定されます。
 薬剤師は、すべての一般用医薬品の販売が出来ますが、登録販売者は第2類と第3類の医薬品のみが販売できます。すなわち、登録販売者が販売できるのは使用に際してリスクの比較的少ない一般薬が対象となります。このように分けられているのは、安全にかかわる説明が、客に的確に伝わるようにという配慮によります。
 医薬部外品は、もともと薬局以外でも販売はできましたので、これは従来どおりです。もちろん、新しい登録販売業でも扱うことができます。
これまで、一般販売業と言っていた業態の名前は消えて、これは新設された店舗販売業に含まれます。
 また、これまでの卸売一般販売業の業態はそのままで特に変わりません。名称のみが卸売販売業と変わります。

4.医薬部外品は存続------3つに分かれる
 医薬部外品というのは、もともと作用の穏やかな医薬品を対象としていますので、現行法規も一般用医薬品とは別にして販売者の制限はしておりません。しかし、最近の医薬部外品には「新医薬部外品」として、以前の薬事法の規定から、別枠で決められた医薬部外品がありました。すなわち、胃腸薬、風邪薬、きず薬など一部作用の緩和な成分によるものは、薬局以外でも販売は可能となって、コンビニなどで広く店頭に並んでいます。
これらの新医薬部外品と、本来の浴用剤他の医薬部外品とが一まとめになり、医薬部外品は次の3区分に分けられました。これらの区分の名称はそれぞれの包装に表示します。
@防除用医薬部外品
A指定医薬部外品
B医薬部外品
 また、有効成分名と量の表示が必要な品目と非表示品目との2種に分けられました。
有効成分名と量の表示が必要な医薬部外品は、@の防除用医薬部外品と、Aの指定医薬部外品です。
 何度もいうように、浴用剤は従来どおりの扱いのままで、有効成分名と量の表示は不必要な品目に指定され、また医薬部外品の区分はBです。したがって、入浴剤 延寿湯温泉の包装表示は一切変更はありません。

<参考文献>
厚生労働省のホームページ 「一般用医薬品販売制度ホームページ」

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