【延寿通信】 2009年02月03日(火)

延寿通信 第66号 2009年2月

乾燥注意報とは?

乾燥からお肌を守りましょう

乾燥から肌を守る 
今の季節、気象情報では各地で「乾燥注意報」がしばしば出ています。通常、わが国では、11月から3月ぐらいまでが、乾燥しやすい季節になっています。
乾燥注意報が出ると、先ず、火の元点検です。火災の起こりやすい状態になっているからです。それから、インフルエンザ、かぜのウイルスが暴れ始めますので、予防対策です。外出時には要注意となります。マスクをお忘れなく。そして、もう一つが、皮膚への影響、特に女性では、肌荒れ、皮膚がかさかさになることを防止しなければなりません。乾燥から皮膚を守るためには、まず保湿剤を。そして刺激の少ない石鹸が効果的な場合がありますし、時には入浴剤の使用もお奨めできる場合があります。

1.なぜ空気は冬に乾燥するのか 
天気予報の番組では、このところ、大雪警報、風雪注意報などのほかに、乾燥注意の警告が多くなりました。冬になると、シベリヤから非常に温度の低い寒気団が到来し、それが湿気を雪にしてしまうので、残った空気はどうしてもからからの乾燥状態になります。ちょうど、冷蔵庫の中の食品が湿気の凍結で乾燥してしまう現象と似ております。食品や医薬品の加工で、液体を固体の粉末にするときに凍結乾燥といって、液体を凍結して水分を飛ばしてしまう方法がありますが、これも同じ原理です。
シベリアからの冷たい季節風が日本海の暖かい対馬暖流の上を渡るとき、大量の蒸発した水を含んで上空で冷え込み、これが高い山にぶつかって地上に雪を降らせ、水分の少ない空気だけが山を越えて太平洋側に降りてきて、空っ風をもたらします。冬の典型的な気象現象です。からからの寒い天気は太平洋側で、日本海側は逆に雪がもたらされ、積雪もあって、湿度の高い寒い天候になります。太平洋側は加湿器が、日本海側は除湿機がそれぞれ使われることになります。冬の乾燥気候は全国的な現象とみなすのではなく、太平洋側と限定しておいたほうが理解しやすいでしょう。

2.乾燥とはどういう状態か
湿っぽい状態とか、乾燥している状態というのは、比較的容易に体験できるので、いまさらくどい説明は要らないでしょう。
空気が乾燥していると、身体の表面からの蒸発は盛んになります。また、静電気の発生もあちこちで見られます。衣服を着替えるときのパチパチという放電、ホテルなどで室内の金属部分にて起こるパッシとくる静電気による軽い衝撃はよく経験されるところです。
気象関係では空気が乾燥してくると、乾燥の注意報が発せられます。それがどういう状態であるかは、気象庁のデータを見ていただきます。さすがに関東地方は上州の空っ風で表現されているように、乾燥状態は関西地方に比べると厳しい数字になっております。関西に比べると関東地方は乾燥しやすい地形にあるためかと思われます。
乾燥注意報は、どちらかいえば、火災予防に主眼がおかれておりますので、体感よりも環境の乾燥に目が向けられています。乾燥注意報の出る判定基準は、各地の土地の様子、地形によって数字は異なります。
たとえば、関西・関東の一部の例を示します。
兵庫県南部(神戸、淡路島) 最小湿度 40%で実効湿度 60%
京都府(北部・日本海側)  最小湿度 40%で実効湿度 70%
東京23区         最小湿度 25%で実効湿度 50%
埼玉県           最小湿度 25%で実効湿度 55%
神奈川県          最小湿度 35%で実効湿度 55%
ここに出ている最小湿度とは相対湿度をいいますが、その値が1日でもっとも低い数字をいいます。通常は午後2時〜3時ごろに相対湿度は低くなります。一方の実効湿度は、木材の乾燥具合を示しており、当日、前日の平均相対湿度を用いて計算されます。この実効湿度が60%より低くなると、乾燥状態が進んでおり、火災が発生しやすくなります。

3.乾燥と健康
(1)ウイルスの活動が活発になる
先日、関東地区の老人医療施設で、多数のインフルエンザ患者発生が問題になりましたが、この場合の原因の一つは院内の湿度が10〜20%と、かなり乾燥した状態になっていたため、ウイルスの動きが活発になったからであると、説明されておりました。
ウイルス感染を抑えるには、湿度を50〜60%ぐらいに保つ必要があります。病院側では余り湿気を高めると、一般細菌、カビの発生が懸念されると言っておりましたが、確かに、多湿状態では、ありうることです。梅雨時のじめじめした気候を想像してください。
室内の乾燥した状態を改めるには、加湿器という便利な器具があり、家庭にも普及してきております。加湿器というのは、ただ設置すればいいというものではなく、衛生的に、かつ安全に働かすにはそれなりに管理が必要です。
加湿をいつでも、だれでも手軽に出来る方法が濡れタオルを掛けることです。また、観葉植物を置くのも一方法です。
目下、インフルエンザウイルスの侵入には死亡率の高い鳥インフルエンザのこともあって、世界の国々がピリピリしており、防疫対策が練られております。我が国でも、これは同じであって、外出時には人ごみには出ない、マスクをする、手を洗う、を奨励され、生活環境の改善では乾燥状態を避けることが推奨されております。
(2)皮膚と乾燥
乾燥の健康への影響で、目に見えて怖いのは皮膚への影響です。皮膚はなんと言っても、からだの保護防御材(バリヤー)であり、体内の組織を一定の環境に保つのに働いており、身体に危険なものが接近・侵入しないように守っております。皮膚は寒冷のみならず、猛暑に耐え、紫外線を遮断して、その上、打撲や衝撃などの外圧からも身体を保護しなければなりません。皮膚のバリヤー機能は、乾燥と寒さで低下してくるので、冬にはアトピー性皮膚炎は悪化しがちといいます。
一方、肌荒れ、肌の乾燥というのは、デリケートなご婦人の肌には、少々の乾燥環境でも障害の起きるのは早く、そしてひどく現れる場合があります。
肌荒れは、皮膚の乾燥によるといいますが、皮膚の老化も無関係ではありません。
乾燥肌を予防するには、保湿剤を塗ること、これが手っ取り早い方法です。予防については後に詳しく触れます。
(3)体内の水分不足
 一昔前まで、激しい野外の運動の後、運動中には水分の補給は禁物でした、それが最近は逆になって、汗かいたり、激しい運動中は体内の水分不足に陥ちいらないよう、どんどん水分の補給をするようになりました。空気の乾燥しているときもしかりです。体表面から水分は失われてゆきますので、十分の水分補給を必要とします。通常は、口が乾いてくるので水分が欲しくなってきます。水分の補給が十分でないと、血液の濃度に影響して血流障害を引き起こすことがあり、その結果、循環器系統に障害を抱えている人では、最悪の場合には脳血管障害や心不全など好ましくない影響の出ることがあります。

4.カサカサ肌の予防
かさかさした荒れた肌は、乾燥肌といわれるほど、乾燥には深いかかわりがあります。
若々しい肌、しっとりした肌を保つために、どういうことをしなければならないか、考えてみましょう。
@皮膚に栄養を
 皮膚の健やかな状態を保つために、栄養クリームとか、乳液など、皮膚に栄養を与えるクリームはいろいろ出ております。最近は健康食品でも宣伝されておりますが、一部の高分子たんぱく質などは果たして皮膚の表面から吸収されるのか、疑問を抱く場合もあります。皮膚のビタミンぐらいでいかがかと思うのですが、これも一概には良否を判断しにくいものです。
A皮膚を清潔に
 身体に汚染物を取り込まないように、皮膚は防壁として働いているだけに、汚れ方もひどいものです。皮膚の表面からの刺激の少ない石鹸をつかって、つねに表面を洗い流しておくことが望まれます。肌荒れの原因の一つになる場合もあります。ただし、ごしごしと荒っぽく洗うのは、逆効果で、皮膚表皮を痛めるので良くありません。
B紫外線照射を避ける
皮膚の老化、かさかさ化の最大の敵は紫外線といいます。紫外線を避けることは、さほど難しいことではありません。日光に露出しないことですので、気軽に実行してください。
日傘の利用は夏だけではなく、最近ではオールシーズンになりつつあります。
C血液の循環を円滑に
生薬配合の入浴剤には血流改善の成分が含まれている場合があります。たとえば、カンピ、マツカワ、センキュウ、ショウブ,リョウキョウなどですが、こういう生薬成分の配合されている入浴剤に浸かるのは皮膚の健康には有効です。
D保湿剤の利用
保湿剤には刺激のある場合もあって、一様にとはゆかない場合もあります。さらに、保湿剤の種類は非常に多く、作用の仕方も異なります。たとえば、アトピーの人は、風呂上りに保湿剤を使うことは多いのですが、皮膚に合う、合わないがあります。数ある中でどのタイプの保湿剤を使うかは医師との相談を奨めます。とくに、敏感肌の人や、赤ちゃん、肌に炎症が起きている場合などは専門家による診療が欠かせません。
水を沢山飲んだら、皮膚がしっとりしてきます、という話は笑い話であって、口から入れた水では、皮膚の水分補給は出来ません。水は外から補います。かさかさしてくるのは、皮膚の構造の一部、角層が水を保持する機能が年齢とともに減少するからです。そのために、保湿剤を皮膚に塗ることは効果的です。水にさらさらしているのがクリームで、油脂の入っているのが軟膏ですが、これはべたべたします。両者は季節によって使い分けます。
保湿剤の有効成分は多々あります。保湿剤には水分の蒸発を防ぐタイプ、皮膚に水分を保つタイプとがあり、生体系、動植物性、多価アルコール系などがあります。最近好んで使われるのが、生体成分に近い生体系物質です。激しい宣伝合戦も行われてり、どれがいいかは、相性もあって決めがたいのですが、余り余分なものが入ってないのがいいでしょうと医師は書いております。毎日2,3回も使うものですから、経済性もいります。
乾燥して荒れてしまった皮膚の症状となれば、専門家の治療を受けることになります。そのようにならないようにひどくなる前の措置では、上述の保湿剤の使用が効果的ですが、普段から、刺激の少ない、皮膚にやさしい石鹸を使うことも予防策になります。たとえば、延寿石けんは、添加剤に化学物質を含まず、穏やかな天然素材で出来ており、皮膚の保護には効果的です。
E入浴の効果
アトピー性皮膚炎の症状は心身の影響を受けやすいといい、また、顔色が心の鏡のごとく振舞うことがあるというように、皮膚は心身の状態から無関係ではありません。時にはゆったり入浴して、心身を休め、皮膚も休ませてください。また、入浴で乾燥から皮膚を守ることも必要でしょう。


<参考文献>
飯田睦治郎:日本の気象、椛ヌ社、東京(2005)
田多井吉之介ほか:健康歳時記、蒲L斐閣、東京(1979)
田上八朗:皮膚の医学、中央公論新社、東京(2003)
気象庁ホームページ

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【延寿通信】 2008年12月27日(土)

延寿通信 第65号 2009年1月

お正月には欠かせない松の話

ー入浴剤にもマツです


延寿通信  第65号  2009年1月

松 

門松、松の内、年の初めは松の木がお目出度のシンボルとして喜ばれます。
縁起のよい樹木の集まり、松竹梅というのは中国伝来だそうですが、とりわけ松は縁起のよい樹木の筆頭にあって、木そのもののみならず、暮らしの中にも、お目出度いときには登場します。
樹木としては、その見栄えの良さもあって、神社仏閣だけでなく、邸宅、公園の中心木として植えられ、各所で大事にされております。
また、古く中国では松葉は仙人の食べる物として大事にされてきました。この伝統は日本にも引き継がれました。長寿の仙人が好んで食べた物となると、松の葉にはおそらく延寿効果があって、クスリとしての効能があるのではないかと想像されます。
入浴剤においても松は、松葉の湯というものがありますが、なんといってもイヌカラマツ(別名:マツカワ)が代表格です。最近ではフランスから海岸松が到来して、健康食品の世界で張り切っております。

1.門松と松竹梅
 正月行事、神事などお目出度いときには、松が真っ先に出てきます。門松は正月を迎えるためには欠かすことが出来ません。つい先ごろまで、正月の庶民の家々の門前には小さな松が飾ってあったものですが、緑保護の立場から、これは、やがて印刷紙に代用されました。今ではこの代用品も消えて民間の家では門松、松飾りはめっきり減り、もっぱら公共の場,商店街に移りました。
 門松を正月に門前に立てるのは、内側は神域で、邪気を払い、汚れを避けることを意味して、神聖な正月の神様を迎えるためであるといいます。これによって、立てた側の家族は一同の多幸、長寿、繁栄を祝います。もともと、松の高木は、天から神が降りてくる、厳粛にいえば降臨される依代(よりしろ=神霊が一時的に宿る)であるといわれております。門松は中国から伝わってきて、わが国では起源が平安時代で昔は正月に限らず、流行病の多い夏などにも立てられていたそうです。
元日から7日まで、正月の期間を松の内といいますが、これは、1月6日か7日に門松が取り除かれますので、それまでの門松の出ている間のことをいいます。松の内の間は、いわゆる正月気分の許される期間で、江戸では銭湯は早仕舞いと決まっていました。ただし、門松を取り除くのが15日である地区では、この時点までを松の内というので、期間は長いようです。
松竹梅はお目出度の象徴です。古くからの伝統を重んじる家では正月の床の間に松竹梅の三幅対の掛け軸を飾ります。室町時代では、元旦が松、二日が竹、三日は梅と、日ごとに変えて飾るのが決まりだったようです。床の間に生け花で松竹梅を飾る場合もあります。
松が筆頭になって、松竹梅を盛り立てているのは、一説には、中国道教由来というのがあります。日本では奈良時代から、松竹梅をお目出度いものとして、絵画や工芸品に盛んに用いられるようになりました。なぜ、松竹梅がお目出度なのかというのは、諸説ありますが、植物のそれぞれの特徴を生かして、松の操、竹の直、梅の香りを重んじて、松は長寿、家運の繁栄、竹の子孫繁栄、梅は君子の徳をあらわすといいます。寒中に緑の操を変えない気高さを示す松、素直で強い竹、凛として寒中に咲く梅、が讃えられます。

2.クスリに登場する松
松は、仙人が好んで食事に用いていたというのです。これが長寿の源泉であり、身軽な行動にも役立っていたようです。しかし、松はおいしそうでもなく、一般人の口には合いません。江戸時代、凶作の年には松の葉、松の樹皮が利用されたこともありました。通常は食料にはならないのですが、薬としては大事な位置にあります。
薬用植物の図鑑(牧野和漢薬草大図鑑に収載)で、薬用のマツ科植物を引いてみると、次のような松が並びます。漢方の世界ですので中国産地のものが出てきます。
・アカマツ(赤松)  日本全土 葉を使う
・バビショウ(馬尾松)中国産 日本にはない 葉以外全体使う
・ダイオウマツ(大王松)もともと北米産であったが、明治末に
渡来  松脂を使う
・フランスカイガンショウ ヨーロッパ海岸 日本にはない、松脂、樹皮
・ユショウ(油松)中国産 日本にはない  全体が使える
・イヌカラマツ(金銭松)中国産 日本にはない  樹皮、根皮
 ここで取り上げたのは、主として漢方処方に基いて使われる医療の場合ですが、松は、何分にも、山野にて目立つ重要樹木でもありましたので、民間医療として、多方面に使われておりました。
 松は民間療法では一般に強壮薬として使われておりますが、これは仙人の食事につなが
ります。中国の古典医書では、できもの、打撲傷、手足のしびれ、中風、高血圧、下血出血、切り傷、淋病、神経痛などが松の効能としてあがっております。
 茯苓(ぶくりょう)は松そのものではなく、主として赤松の根に寄生する サルノコシカケ科の菌ですが、大きいのはバレーボールぐらいになることもあります。茯苓は、中国では古くから貴重な医薬品として用いられてきて、いまもなお漢方医療では多くの処方に出てきます。日本薬局方にも収載され、鎮静、利尿などの効果があり、また、婦人科疾患に良く使われる桂枝茯苓丸の主薬にもなっております。
 江戸時代の医書に、松の葉は胸腹につかえているものをすっきりさせる、便秘にいい、痰や咳のひどいとき、脾胃の弱っている時などに、効能益あること少なからずと書いてあります。今日も、松の葉は健康補助食品として利用されております。
松脂は、これはこれで用途広く、『本草綱目』という中国の古典では皮膚病に使うことを推奨しております。松脂は別名ロジンですが、今日では工業原料として、用途は広く医薬原料であるテレピン油、クレオソートなどが作られております。ロジンは局方にも収載されております。
 松脂の精油(テルペン油)は不飽和脂肪酸が多いので、血中のコレステロールを下げ、胆石の薬として使うこともあったようです。
 薬の対象となる松はわが国で最も馴染みのある赤松と黒松です。ただし、漢方では赤松のみが、取り上げられています。ここで、赤松と黒松について簡単に触れておきます。
赤松と黒松は幹の色が違うので一見したら区別はつくといいますが、しかし、文字通り赤黒の色で幹が赤いから赤松とは簡単にはゆきません。赤松と黒松は性質がかなり異なるので林学、植物学など学問の世界、および植木職など専門家の間でははっきり識別されます。たとえば、通常は、マツタケは赤松にしか生えませんし、ブクリョウは逆に黒松です。大体、山野にあるのが赤松で、海岸地帯にあるのが黒松といいます。生育条件が異なるからですが、赤松は直立して高くなるけれど、黒松は海岸で見られるように横にねるとも言います。赤松は枝、葉が柔らかくしなやかで女性的、黒松は剛直で男性的といいますが、いずれにしても赤松と黒松の区別は両者を並べてみないと判断しにくいものです。
 フランス海岸松の樹皮エキスはフラバンジェノール、ピクノジェノールが成分の混合物として、化粧品、健康茶健康食品に用いられております。適応領域は広く、抗菌効果、糖尿病合併症抑制の効果もあるといわれています。名前はフランス海岸松とはいうものの、フィンランド、ロシア、中国、ニュージーランドなどからも供給されております。
 
3.入浴剤ではこの松、松皮(イヌカラマツ)です
松葉を風呂に入れたり、釜風呂で松の葉をくすべて用いる松葉風呂というのが、歴史的にはあるのですが、現在は余り使われておりません。松葉風呂は『都名所図会』に掲載されていて、奈良時代に、釜風呂にて青松葉をたいて、その蒸気で怪我の治療をすると効果があると書いてあります。松葉の風呂は高血圧にいいといって、風呂に青い松葉を小刻みにして湯に入れると、湯は薄い松葉色になり、香りもいい、湯上りの爽快感は格別であるという記事も見られます。昔、仙人に教わった秘法というのですが、今日の書物には出てきません。また、効能も明らかではありません。
効能といえば、風呂に入れて確かなのが松皮(イヌカラマツ)です。イヌカラマツには、消炎効果、抗菌作用、抗アレルギー作用などが認められております。松皮の松はイヌカラマツという独特の松が使われており、これが配合された入浴剤は唯一、医薬部外品「延寿湯温泉」です。
イヌカラマツは中国原産で、この樹木は日本にはありません。中国名を金銭松といい、中国の高い山にある落葉高木です。カラマツですので、秋にはあざやかな黄金色に染まるので、金銭松とよばれております。日本ではめったに見られませんが、関西では京都府立植物園にて見事なイヌカラマツ(金銭松)を見ることが出来ます。この木は中国からの友好親善の記念樹として植えられておりますので、選ばれた樹木なのでしょう。一見の価値ありです。

<参考文献>
高嶋雄三郎:松、ものと人間の文化史、法政大学出版局、東京(1975)
岡田稔監修:牧野和漢薬草大図鑑、北隆館、東京(2002)
池谷浩:マツの話―防災からみた一つの日本史、五月書房、東京(2006)
有岡利幸:松 日本の心と風景、人文書院、京都(1994)

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【延寿通信】 2008年12月04日(木)

延寿通信 第64号 2008年12月

あなたのお風呂の湯は酸性?アルカリ性?

ー風呂の湯と酸性、アルカリ性

アルカリ性と酸性 

レモンや酢のすっぱいのは酸性であるから、ということはご存知と思います。このように液体では、水溶液としての基本的な性格として、アルカリ性とか、酸性という性質をあらわす言葉が、常に付きまといます。
水溶液というのは、水にある物質を溶かしたり、水が主体になった液体のことをいいます。水溶液でない場合は油であったり、あるいはアルコール溶液と呼ばれたりします。水溶液がアルカリ性とか、酸性とかで分けられるのは、ちょうど、生物、特に動物などでオス、メスが話題になるようなものでしょう。オス、メスである程度、性質の類推ができるように、アルカリ性とか、酸性とかで水溶液に独特の性質が現れ、液の性状、挙動を理解することができます。
アルカリ性とか、酸性というのは健康な暮らしに大きな影響を与えております。最近は酸性の飲料は歯を溶かすから、寝る前にはきちんと歯を磨いて、口中に酸性物質を残さないようにといわれております。
アルカリ性とか、酸性というのを、「酸と塩基(えんき)」ともいいます。このアルカリ性とか、酸性の性状を表すのが水素イオンであり、その濃度によって性状が決まり、中間には中性というのがあります。
この水素イオン濃度を表す数字をペーハー(pH)、最近はピーエイチといいます。一番手身近な呼称はピーエイチ(pH)かもしれません。ここではピーエイチ(pH)を使うことにしましょう。入浴の際の風呂の湯のピーエイチ(pH)すなわち、浴槽の液体がアルカリ性か、酸性かというのは、重大な影響とはいわないにしても、少なからず身体の皮膚に影響を与えます。とくに、温泉では泉質といいますが、泉質の皮膚への影響は、無視できないものがあります。

1.浴槽の湯はどちらか
銭湯の場合、浴槽の湯はpH5.8〜8.6 と法律で定められております。これは、プールの場合も同様です。家庭の風呂は通常は水道水を使いますので、水道水のデータになりますが、水道水の厚生労働省の基準はpH5.8〜8.6ですので、浴槽の湯と同じです。この数字はややアルカリよりですが、性質は中性です。 
水道水の基準は国の定めた範囲内にありますが、実際の水道水の水質検査の結果では全般的にやや、アルカリよりになっております。たとえば、大阪市の場合はpH7.5であり、堺市のデータもpH7.5程度になっております。数字の上ではアルカリ性でも、実態はむしろ中性という方がいいでしょう。この程度のpHでは中性ですので、身体への影響はありません。
日本各地の水道水の水質は、地方自治体によってそれぞれ国の規定の範囲内で定められているので、実態では中性でも数字ではやや酸性に傾いている地方もあることと思います。
 この浴槽に入浴剤を入れたら、ということは最後にまとめておきます。

2.温泉の場合
 温泉は銭湯とは異なり、酸性、アルカリ性の湯があるのは当たり前で、さまざまです。それを選べるのが温泉の良さでもあります。温泉では湯の分析書が表示されておりますので、泉質がどういう性質かは理解しやすいでしょう。温泉の泉質を分析することは法律で定められており、その性質によって温泉を単純温泉、炭酸水素温泉,塩化温泉ほかに分けられます。なお、ここでは、pHの細かい規定はありませんが、療養泉の場合、pH8.5以上の単純温泉をとくにアルカリ性単純温泉といい、水素イオンが1kg中に1mg含まれる場合を酸性泉と名づけおります。
これらのアルカリ温泉、酸性泉に限ってpHが示されているのは温泉療養で泉質の影響がとりわけ大きいからといわれております。
これは法律そのものではありませんが、鉱泉分析法指針ではアルカリ性の温泉、酸性の温泉というのを、指針ではpHの数字で次のように分類しております。
酸性温泉:pH3未満、 弱酸性温泉:pH3以上6未満、 中性:pH6以上7.5未満
弱アルカリ性温泉:pH7.5以上8.5未満、アルカリ性温泉:pH8.5以上
アルカリ性の温泉の場合、湯にすこし入っていると身体中に泡の粒のような気泡がびっしり付着して、肌がつるつるしてくるといいます。肌がつるつる、あるいはぬるぬるしてくるというのはアルカリ性の一つの特徴です。味はやや渋く、酸性ほどはっきりした味はありません。
酸性の強い温泉は火山地帯にあって場所は限られておりますが、湯によって金属が冒されるので、設備の保全が要注意になっております。日本一の強酸性温泉は秋田県の玉川温泉です、草津温泉も酸性温泉です。
アルカリ性の温泉は酸性温泉よりも多いのですが、金属と接触しても穏やかで金属を冒すということはありません。今、問題になっているのは、アルカリ性の温泉が増加しているにかかわらず、本来のアルカリ温泉の特徴である、肌のツルツル感が減少し、肌で分からなくなってきているということです。

3.からだにどういう影響を与えるか
 酸性飲料は歯を溶かすとか、あるいはアルカリ性は皮膚の角質を軟化するので、皮膚のすべすべ感、つるつるとした感じ、あるいは洗浄作用があるとか、いいます。
 入浴では問題になりませんが、万一、強い酸性やアルカリ性が皮膚に接触すれば、皮膚に炎症を起こす場合があるので、皮膚についたときはただちに水洗いをするという処置が要ります。
酸性とか、アルカリ性というのはあくまでも、水素イオン濃度の問題であり、化学の世界ではほんの一部の現象であって、実際にはイオンそのものの動きに注目しなければなりません。人体の胃における消化、血中を移動する物質、神経細胞の信号伝達あるいは薬の効き目、安全性などは、すべてイオンの動きで働いております。
 このイオンの動きとなると、話が複雑になりますので、ここでは、酸性、アルカリ性に話題を絞ります。
ビールやワインは酸性飲料です。そのほかの食品、家庭用品、人体の体液のpHをみてみましょう。
胃液:pH 1.0、酢:pH 2.0、レモン・リンゴ:pH 2.5、みかん:pH 3.5、
醤油:pH 4.0、コーヒー:pH 5.0、牛乳:pH 6.5、血液:pH 7.5、涙:pH 8.5、
せっけん:pH 9.5
 食品の世界では、アルカリ性食品とか酸性食品とかが話題になり、血液がアルカリ性だから、アルカリ食品の摂取が望ましいという俗説があります。参考までに、この説には科学的な根拠がないと言われております。
 食品の酸性、アルカリ性というのは、そのまま水溶液の状態で測定したものではなく、食品を燃焼して、その灰の水溶液の水素イオン濃度を測定結果で決めます。だから、すっぱいものがすべて酸性食品かというとそうではありません。酸性食品には肉類、卵、米など、アルカリ性食品にはニンジン、ほうれん草、レモン、梅干などがあります。

4.アルカリ性とか、酸性というのは化学的にはどういう意味なのか
 厳密にはピーエイチ(pH)というのは水素イオン濃度の濃さを表す尺度で、アルカリ性か、酸性の度合いを示す数字です。
料理に使う塩(しお)は水に溶かすとナトリウムイオンと塩素イオンに分かれます。イオンとは原子が電気的にプラス、あるいはマイナスの状態になることで、どちらになるかは原子によってこれは決まっております。化学反応の多くは、電気的に原子がイオンの状態になってはじめて起こります。イオンには電気的に、それぞれくっつきやすい性質や、逆に反発する性質を帯びております。
 たとえば、入浴剤 延寿湯温泉を浴槽の風呂の湯に入れると、もともと中性であった湯に、成分の一つである炭酸ナトリウムの炭酸イオンというマイナスイオンとナトリウムのプラスイオンが湯の中に放出されて、炭酸イオンの優位な湯はアルカリ性になります。これが皮膚にいい影響を与えるのですが、その反面、たまたま、浴槽が大理石であると、アルカリ性の溶液は大理石の表面を冒し、光沢を奪う性質がありますので、大理石にはアルカリ性である入浴剤は禁物です。
 塩素系のカビとり剤に、酸性の洗剤を混ぜるのは危険です。実際にはトイレ掃除用の強酸タイプの洗剤との接触が危険なのですが、酸とアルカリとが反応して有毒な塩化水素ガスを発生させます。入浴剤を使って、浴槽に炭酸カルシウムの結晶がついたときには、クエン酸や、酢などの弱い酸性の洗剤の使用をお奨めしますが、このときは、念のため、塩素系のカビとり剤とは混ぜないようにします。酸とアルカリとの反応は中和反応といい、その状態は、ケースバイケースで、穏やかな場合、あるいは激しい場合もあります。
 ピーエイチ(pH)というのは水素イオン濃度であるといいました。この濃度の測定方法
には、試験紙による方法はじめ指示薬、測定器によるなどいろいろあります。酸性・アルカリ性の最も簡単な判定に使われのはリトマス試験紙です。青い試験紙が、赤くなると酸性で、アルカリ性は赤い試験紙が青くなります。
 アルカリ性、酸性では強い、弱いということがよく出てきます。強酸、弱酸などですが、
この強い弱いは、水素イオン濃度で決まりますが、強、弱は一般には慣習で使われます。家庭用品品質表示法では、次のように段階を定めており、これらの用語は市販の家庭用
洗剤などに表示されています。
pH 3未満:酸性、 pH 3以上6未満:弱酸性、 pH 6以上8以下:中性、
pH 8以上11未満:弱アルカリ性、 pH 11以上:アルカリ性
 化学の世界でイオンの動きを最初に利用したのは電池で、1800年ごろイタリアの科学者ボルタが発見しております。電池はその後、どんどん発展しておりますが、基本原理は変わりません。いまなお、二酸化マンガン電池やリチウム電池、あるいは自動車に使われているバッテリーなど、それぞれイオンの働きが利用されております。

5.入浴剤をいれたら
 さる11月27日、朝日新聞は硫黄含有の入浴剤(610ハップ=ムトウハップ)が硫化水素自殺に使われるので、薬局での販売自粛が響いて売上げが激減した結果、メーカーは販売中止を決定したと報じています。この入浴剤は1927年に発売され、唯一の医薬品の入浴剤でありました。それと、注目すべきことは強い酸性であり、金属を冒すので要注意という製剤でもあり、入浴剤で強い酸性と言うのは珍しいことでした。
 入浴剤は通常はアルカリ性です。もちろん、延寿湯温泉も浴槽にいれるとアルカリ性で、pHは10ぐらいです。これは化粧石鹸で洗顔するときの水溶液とほぼ同じです。
温泉のところで取り上げましたように、アルカリ性というのは洗浄効果がありますし、皮膚からの吸収を助ける役割もあります。
入浴剤の残り液を洗濯用に使うことは、アルカリ性でも洗剤の洗浄力には影響与えないので、通常は差し支えないのですが、入浴剤の色が衣類に移ることはありえます。これは要注意で、十分、水道水ですすぐことが必要です。延寿湯温泉の場合は、生薬をそのまま使っておりますので、残り湯の利用は着色の心配があり、お奨めできません。
 浴槽や風呂釜への影響は、延寿湯温泉も含めて、アルカリ性の入浴剤であれば、通常は金属を冒すという問題は発生しません。逆にアルカリ性は金属の洗浄に役立ちます。
 強酸性や強アルカリ性ですと、金属が冒される以前に、人体に影響が出てきます。そういうことは、よほどの敏感な皮膚でない限り問題はありません。入浴剤は化粧石鹸と同程度のpHですので、化粧石鹸が使えるのであれば、アルカリ性の影響は心配なしとみていいでしょう。



 
<参考文献>
水谷仁編集:イオンと元素、ニュートン別冊、株式会社ニュートンプレス、東京(2007)
石川理夫:温泉の法則、集英社、東京(2003)
浴用剤工業会:入浴剤ハンドブック、東京(1993)
朝日新聞:2008年11月27日号(2008年)

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