【延寿通信】 2009年04月02日(木)

延寿通信第68号 2009年4月

マツカワの抗アレルギー効果/抗アトピー性皮膚炎の効果


 今年のスギ、ヒノキ花粉飛散による鼻、目のアレルギー症状の発症は例年になく激しく、たくさんの方が悩まされました。2月ごろから症状が出始めて、4月になって、そろそろ終息の時期かと思われますが、いかがでしょうか。
 アレルギーとなると実は疾患の範囲は非常に広く、たとえば、ある専門書では、アレルギー疾患として、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、食物アレルギー、アレルギー性鼻炎・花粉症、関節リウマチ まで並んでおります。共通しているのは、人体の免疫反応が関係していることで、これによって、全身的な、あるいは局所的な障害を起こすことです。
 アレルギー症状で、歴史的に最も早く記録に残されたのは5000年ほど前に、エジプトのメネス王がハチに刺されて死亡したという記事だそうです。免疫という用語は、わが国では伝染病の「疫を免れる」という意味で、たとえば天然痘の予防に用いられる種痘や、あるいはジフテリアのワクチンなどもその中にあって、これらが免疫の主流として用いられてきたため、今ここでテーマにしようとしているアレルギー症状とは、やや異質の感じがいたします。もちろん両者は根底ではつながっております。古くて新しい病気、それがアレルギー疾患、アトピー性皮膚炎です。
 今回のテーマはこれまでもたびたび本欄で取り上げてきたマツカワ(植物名ではイヌカラマツ)について、この植物の抗アレルギー効果、とくにアトピー性皮膚炎に対する有効性を、いくらか詳しくご紹介することにいたします。

1.アトピー性皮膚炎とは
 1920年Cocaは一定の物質による人間特有の先天性過敏症を「不思議な病=アトピー」と名づけました。これが、今日、わが国で多くの患者が悩まされているアトピーという病気が医学の世界に顔を出してきた端緒であります。まだ、生誕90年です。もともと不思議な病気ですので、本質は不明のままでしたが、アトピーでは本人および家族に気管支喘息、枯草熱、アレルギー性鼻炎が認められ、これらが遺伝して、この家系の人には特定の食物や抗原には異常に敏感であるといわれていました。
 アトピー性皮膚炎の研究が進んだのは1980年以降です。それまでは、アトピー性皮膚炎発生の原因や治療のことも、さまざまな説があって、素人療法も絡んで複雑な様相を呈していました。さいわい、近年になって、本体の研究が進み、基本的治療も固まってきました。つい最近、厚生労働科学研究「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2005」が発表され、症状の実態や治療の考え方などは大きく前進しております。
 それによると、アトピー性皮膚炎の定義は「アトピー性皮膚炎は憎悪、寛解を繰り返す掻痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ」とされています。このアトピー素因(体質)というのは、気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎の家族歴・既往歴があるか、あるいはIgEという抗体を産生しやすい体質を言います。
 アトピー体質の家族歴では、両親に本症状の既往歴がある場合、その子供の75%に、両親のいずれかに既往歴のある場合は56%に、両親に既往歴のまったく見られないときには21%の確率で発症するといわれております。
 アトピー性皮膚炎の皮膚は乾燥肌になるのが特徴で、このため皮膚のバリア機能が低下します。バリア機能というのは、外部からの有害物質や刺激の侵入を防ぐ働きをいいます。
 このような皮膚炎の発生は免疫学の領域で、T細胞というリンパ球がかかわります。T細胞はアレルゲン(抗原)との接触で抗体を産生し、それがサイトカイン産生をよびます。サイトカインは免疫担当のT細胞によって分かれますが、ここではTh1細胞が中心です。サイトカインというのは細胞から分泌される情報伝達物資で、ホルモンと作用は似ていますが、性状はまったく別です。このサイトカインの動きによって炎症、かゆみの発生、すなわちアレルギー反応が出ること、ここではアトピー性皮膚炎が発症することになります。
 

2.アトピー性皮膚炎の治療
アトピー性皮膚炎の症状が出るのは、アレルギーという原因ははっきりしていても、発症の背景は単純ではありません。たとえばストレスも関係してきますし、悪化因子は年齢によっても大きく異なります。アトピー性皮膚炎でかゆみの発生する要因は温度・発汗が96%、衣類(ウール)が91%、次いで精神的ストレスが81%、以下食物が49%となっています。
治療では何よりも皮膚の衛生、保護が重要で、いわゆるスキンケアとして、皮膚の清潔、保湿、環境の整備などがあります。皮膚の清潔では毎日の入浴・シャワーがあげられます。皮膚の保湿には、とくに注意が向けられております。
 薬物療法では、免疫の作用に重点をおいて、ステロイド外用剤やタクロリムス(免疫抑制剤)、抗ヒスタミン剤の3種が基本の薬物になっております。これらの他に、全身的対症療法薬の一つに漢方薬が挙げられます。さきほどもご紹介したように、症状の悪化にはいろんな要素が絡んできますので、漢方のような、全身対象の医薬品の利用が効果的の場合があります。ステロイド外用剤やタクロリムスは免疫を抑制する作用を有しております。これらは優れた治療薬ではありますが、副作用もあることから、本剤の効果を的確に発揮させるためには、医師の管理下で使用します。

3.マツカワの効果
マツカワはイヌカラマツとも言われマツ科に属する中国原産の薬用植物で、古来、中国では皮膚科関係の疾患、特に真菌感染症に用いられてきました。
このマツカワの薬理作用について、抗アレルギー作用、アトピー性皮膚炎の有効性を次のような綿密な研究によって結果が発表されております。
その研究成果の一部を紹介します。
(1)ヒスタミン遊離阻害作用
(2)角質水分量、経表皮水分蒸発量
(3)アトピー性皮膚炎モデルマウスの有効性
(4)菌増殖の抑制

(1)ヒスタミン遊離阻害作用
 ヒスタミンはアレルギー反応を引き起こす中心的存在で、免疫グロブリンがマスト細胞に結合すると、マスト細胞からヒスタミンが放出されます。ヒスタミンは生理活性物質で、これは血管の拡張や透過性を高めるので、浮腫や痒みなどの症状が現れます。そのため、アレルギー症状を発症させないためには、このヒスタミンを放出させないようにすることが重要です。ヒスタミン遊離阻害作用を試験することは、この放出を抑制する作用を見るためです。試験結果では、マツカワには強い抑制作用が出ております。
現在、アレルギー性鼻炎や、喘息などの予防・治療薬として定評があり、広く使われているクロモグリク酸ナトリウム(商標:インタール)は、このマスト細胞からのヒスタミン放出抑制に強い作用を有しております。マツカワには、それと類似する作用があります。
(2)角質水分量、経表皮水分蒸発量
 アトピー性皮膚炎では皮膚の乾燥が症状を重くするので、症状を鎮めるためには、できるだけ皮膚の保湿を考えます。とくに風呂上りでは、皮膚の湿気を逃さないよう配慮します。ここで行われた試験は、皮膚の湿度がマツカワによって、どのように保たれているかを判断するためのものです。豚の背中の皮膚を用いて試験したものですが、マツカワ投与後、角質水分は増加しており、水分の蒸発量に変化はなかったと報告されております。
(3)アトピー性皮膚炎モデルマウスの有効性
 アトピー症状を有するマウスを用いて、皮膚にマツカワエキスを28日間塗布して、その経過を見るのですが、モデル皮膚炎を悪化させることなく、またマウスの体重にも影響はなかったとのことで、有効性は確かめられました。
(4)菌増殖の抑制
 アトピー性皮膚炎の場合、痒みが激しいので、意識的に、あるいは無意識に激しく皮膚を掻くために、皮膚が破れて細菌の侵入が起こり、患部はますます悪化して、痒みが増すという悪循環を招きます。この細菌感染を少しでも防ぐということは、痒みを抑えるために重要です。化膿の激しいときには抗生物質投与がありますが、通常は余り使わないで、穏やかな痒み防止薬物の使用が推奨されます。
このテストではマツカワエキスによって、菌の増殖が抑制される否かを調べたもので、判定結果では、その効果が認められております。
もともと、漢方の世界でマツカワが長い歴史にわたり使われてきたのは、この微生物感染の分野であって、特に真菌類増殖の抑制には効果のあることが知られております。

5.おわりに 
 アトピー性皮膚炎の疾患および治療は、一部をここで紹介したように最近になって急激に進んでおります。しかし、まだ根本的な治療という点では、これからの臨床研究の進展を待たねばなりません。
 後半部分にて取り上げたマツカワは入浴剤 延寿湯温泉の主要成分でもあります。マツカワのアトピー性皮膚炎に対する試験の結果をご理解いただけたかと思います。ただし、この結果は動物試験で、また、試験に使ったのはマツカワのエキスであり、濃度は医薬品を前提にしていますので高く、医薬部外品の延寿湯温泉の場合とは、やや異なります。  
 入浴剤の延寿湯温泉では、配合された他の生薬成分の相互作用も加わり、毎日の入浴で使用しても差し支えないよう作用は穏やかにしてあります。アトピー性皮膚炎の激しい痒みから解放されることに入浴剤 延寿湯温泉が少しでもお役に立つことが出来ればいいのですが、一度お試しください。

<参考文献>
厚生労働研究「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2005」
平澤康史ほか「イヌカラマツエキスの抗アレルギー作用ならびにアトピー性皮膚炎に対する有効性の検討」日本薬理学会雑誌、Vol.124(2004)、No.4  271-283

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【延寿通信】 2009年03月02日(月)

延寿通信 第67号 2009年3月

本書は入浴の科学、温泉医療の話などユニークな内容が特徴です。

--阿岸祐幸著「温泉と健康」の紹介

『温泉と健康』温泉と入浴の医療を学ぶ 

このところ、温泉や銭湯あるいは入浴にかかわる書物はたくさん出版されており、本欄でもすでに何冊か紹介してきております。温泉の本といえば、ピンからキリまで多種多様ですが、本年1月に出版された阿岸祐幸先生の岩波新書『温泉と健康』は一味違います。
まさに入浴・温泉科学の本であり、科学的というか、医学の立場で、入浴と温泉医療が親切に説明なされております。阿岸祐幸先生は温泉医学のお医者さんで、長年にわたり大学、温泉医療研究施設で温泉医学を研究され、豊富なご経験、臨床のデータが本書ではベースになっており、温泉そのもの、健康のための入浴・温泉療法が的確に語られています。
入浴や温泉医療にご関心ある方には一読をぜひお奨めいたします。
本書は次のような構成になっております。
@温泉の基礎 A入浴の心身への作用 B温泉療法の意義 C科学的にみた泉質D温泉療法の効果とメカニズム E温泉地周囲と健康づくり
 詳細は本書を手に取っていただくとして、ここでは本書の中でもユニークなところに絞って、温泉へは深入りを避けて、A入浴の心身への作用とE温泉地周囲と健康づくり、を中心に取り上げます。

1.温泉は医療に正しく利用されているか
 本書は温泉医療が中心です。先生の長年の研究は温泉医療ですので、温泉は健康維持、医療に正しく利用されねばならない、というのが本書の狙いであり、その啓蒙書でもあります。日本の今日の温泉は医療には的確に利用されているとはいいがたく、諸外国に比べると、世界のトップクラスにあるわが国の豊富な温泉が宝の持ち腐れのような状態にあると、先生は残念がっておられます。
 一つには、わが国の温泉が休養を中心においており、短期滞在の歓楽型で、医療よりも食事や景観に十点がおかれ、施設が豪華になってきていることです。その結果どうしても利用料金が高くなり、利用客に負担がかかります。
本書では欧米の温泉療法の例、温泉地が紹介されておりますが、先生の目で選ばれたということはありますが、医療という立場での温泉とは、こういうものかと、違いを感じさせます。欧米の温泉では医師が駐在して治療、指導にあたり、さらに治療のプログラムも用意されて、医療施設として十分配慮されています。温泉保養地は歓楽の施設ではなく、あくまでも療養のためにあって、温泉の泉質だけでなく、入り方、温泉をとりまく環境も
含めて、健康のために利用しなければならないのです。
 わが国には古くから湯治ということがあり、今もなお地域によっては連綿と続いておりますが、温泉の利用をちょうど、湯治という立場で理解すると、本書の先生の主張は分かりやすいか思います。

2.入浴の心身への作用
 必ずしも温泉とは限らないのですが、入浴というものが身体に与える影響を医学的に理解しておくことは重要です。この中で取り上げられているテーマは次の通りです。
 身体が軽くなること、静水圧の効果、循環器系統への作用、入浴の利尿作用、望ましい半身浴、水中と空中との温度の感じ方、入浴と高血圧、活性酸素防御機能、熱ショックたんぱく質、高温浴と血栓、入浴の心理的効果
 これらの中から、興味深いところを2、3 取り上げます。
(1)循環器系統への作用
 水の中に身体をつけると、水圧が加わり、身体は圧迫されてきます。静水圧というのは水圧のなかでも、流れていない水の圧力をいいますが、通常は水圧という用語で済ませることもあります。静水圧は水にもぐったとき、10メートルの深さで1気圧といわれております。立ったまま、風呂に浸かると、体表面が1.4平方メートルの場合、560kgの水圧がかかってきます。これは非常に大きな圧力であり、このために、身体は圧迫されて縮んできます。10分間浸かっていると、男性の場合、腹囲は4センチ縮むというデータがあるそうです。これだけ水圧がかかってくると、体内の血液循環にも影響が出てきます。静脈は柔らかいので、伸び縮みしやすく、水圧が加わると静脈は圧縮され細くなります。
手足、皮膚、腹部の静脈血液は心臓に向かって移動しはじめます。このことを「静脈還流が増える」といい、心臓に負担のかかることを示しており、もともと心臓に障害を抱えている人には好ましいことではありません。しかし、これが半身浴であると、立っているときの数字とさほどかわりないため、心臓への負担は大きくないそうです。全身浴といって首までどっぷりつかって、長時間入っているのが心臓に良くないのであって、この入り方を改めれば、さほど心配はありません。
(2)入浴と血圧
心臓の負担を減らすさらに好ましい浸かりかたは「寝浴」といって、浅い浴槽で寝るような姿勢で入ることです。いわゆる洋式の浴槽が、この「寝浴」用になっており、最近もわが国の風呂桶の主流になってきているようです。寝浴ですと、循環器系への影響は少なく、手足を十分に伸ばせるので、筋肉や関節の緊張が緩む、さらに、心理的にリラックスできる、薬効成分の体内への吸収が多い、など半身浴にくらべて利点があります。
入浴と血圧との関係では、湯の温度によって血圧は影響されますが、39度以下のぬるい湯ではほとんど変わらず、次第に低下します。逆に42度以上の熱い湯の全身浴では入浴直後に血圧は上昇し、血管も収縮するので、血圧上昇値は大きくなります。2~3分たつと、血管は拡張するため、一旦は下がりますが、次に内臓や筋肉の血管が収縮して平常時の数値にて血圧を維持しようとして血圧低下は止まります。

3.温泉の環境が健康にプラスになっている
(1)保養と休養
 温泉に出かける目的には休養と保養とがあります。先生は「休養」と「保養」という言葉を次のように使い分けておられます。
「休養」とは休み、養うこと、1〜3日程度の期間で,日常生活で生じたストレスや疲労を取り除くことが目的となります。一方、「保養」とは、1〜3週間ほど滞在して、休養に加えて次の活動のために体調を整え、体力増加や健康増進を目的に積極的に行動することです。
 本書では、「温泉療法」という用語が使われておりますが、「療法」は病気治療の手段・方法であります。「温泉療法」にはわが国の湯治も含まれます。  
温泉療法は温泉に浸かるだけではなく、食事療法、運動療法を組み合わせて、広く解釈する場合もあります。本書では、後者にあって、温泉保養地医学という立場で、温泉療法が取り上げられております。
 温泉地の環境が健康に役立っていると言う見方はユニークであり、本書独自の内容でもあります。
(2)森林浴とテルペンの効果
 温泉のある場所といえば、通常は都会から離れた、緑深い山の中、あるいは日光さんさんの海辺などが浮かんできます。緑の中では、とくに森林浴は心身をリフレッシュさせる健康法として定着してきました。うっそうと茂った緑の中を散策するのは、手軽に出来る健康法の一つであり、このような環境にある温泉地では、単に温泉に浸かるだけでなく、緑の散策を奨めておられます。特に、先生はアロマテラピーの中でも、森林の精油、テルペンの心身に与える効果に目を向けておられます。
 テルペンというのは、いわゆる植物の芳香性精油成分を言い、爽やかな心休まる香りの
いい精油の大部分が、この中に含まれます。森林の中を歩いていて、気分が爽快になるのはこのテルペンのせいで、「フイトンチッド」ともよばれております。たとえば、竜脳(ボルネオール)や樟脳(カンフル)はテルペンを代表する仲間です。生薬の世界ではテルペンは大事な精油成分でもあり、縁が深いのです。ヒノキや杉の仲間もボルネオールを含んでおりテルペンのいい香りを発散します。参考までに入浴剤「延寿湯温泉」の香りはこのテルペンであり、ボルネオール、カンフルが働いております。入浴剤にテルペンが入っているというのは非常に珍しいです。
 海岸の温泉では海の自然療法としてタランソラピー(海洋療法)が取り上げられていますが、ここでは略します。

<参考文献>
阿岸祐幸:温泉と健康、岩波書店、東京(2009)

ご覧下さい!
『釈ビューティ』(ワニブックス)が1月に出ました 著者:釈由美子さんのお話
「ダイエットやビューティは女性にとっての永遠のテーマでもあるし悩みは尽きないもの・・・・。だからモット美しく、モット健康的に向き合っていきたいですよね。今回、初めての美容本を出せていただくにあたり、読んでくださる方に精一杯の感謝の気持ち込めて、今、私が持っているすべてのビューティ法や、おすすめの商品を「これでもか!」っていうくらい 1冊にぎゅっ!!とたくさん紹介させていただきました」(あとがきより)
<この本の56ページに 入浴剤「延寿湯温泉」が紹介されております。釈由美子さんの写真がいっぱいの楽しい本です。 延寿通信編集部> 

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【延寿通信】 2009年02月03日(火)

延寿通信 第66号 2009年2月

乾燥注意報とは?

乾燥からお肌を守りましょう

乾燥から肌を守る 
今の季節、気象情報では各地で「乾燥注意報」がしばしば出ています。通常、わが国では、11月から3月ぐらいまでが、乾燥しやすい季節になっています。
乾燥注意報が出ると、先ず、火の元点検です。火災の起こりやすい状態になっているからです。それから、インフルエンザ、かぜのウイルスが暴れ始めますので、予防対策です。外出時には要注意となります。マスクをお忘れなく。そして、もう一つが、皮膚への影響、特に女性では、肌荒れ、皮膚がかさかさになることを防止しなければなりません。乾燥から皮膚を守るためには、まず保湿剤を。そして刺激の少ない石鹸が効果的な場合がありますし、時には入浴剤の使用もお奨めできる場合があります。

1.なぜ空気は冬に乾燥するのか 
天気予報の番組では、このところ、大雪警報、風雪注意報などのほかに、乾燥注意の警告が多くなりました。冬になると、シベリヤから非常に温度の低い寒気団が到来し、それが湿気を雪にしてしまうので、残った空気はどうしてもからからの乾燥状態になります。ちょうど、冷蔵庫の中の食品が湿気の凍結で乾燥してしまう現象と似ております。食品や医薬品の加工で、液体を固体の粉末にするときに凍結乾燥といって、液体を凍結して水分を飛ばしてしまう方法がありますが、これも同じ原理です。
シベリアからの冷たい季節風が日本海の暖かい対馬暖流の上を渡るとき、大量の蒸発した水を含んで上空で冷え込み、これが高い山にぶつかって地上に雪を降らせ、水分の少ない空気だけが山を越えて太平洋側に降りてきて、空っ風をもたらします。冬の典型的な気象現象です。からからの寒い天気は太平洋側で、日本海側は逆に雪がもたらされ、積雪もあって、湿度の高い寒い天候になります。太平洋側は加湿器が、日本海側は除湿機がそれぞれ使われることになります。冬の乾燥気候は全国的な現象とみなすのではなく、太平洋側と限定しておいたほうが理解しやすいでしょう。

2.乾燥とはどういう状態か
湿っぽい状態とか、乾燥している状態というのは、比較的容易に体験できるので、いまさらくどい説明は要らないでしょう。
空気が乾燥していると、身体の表面からの蒸発は盛んになります。また、静電気の発生もあちこちで見られます。衣服を着替えるときのパチパチという放電、ホテルなどで室内の金属部分にて起こるパッシとくる静電気による軽い衝撃はよく経験されるところです。
気象関係では空気が乾燥してくると、乾燥の注意報が発せられます。それがどういう状態であるかは、気象庁のデータを見ていただきます。さすがに関東地方は上州の空っ風で表現されているように、乾燥状態は関西地方に比べると厳しい数字になっております。関西に比べると関東地方は乾燥しやすい地形にあるためかと思われます。
乾燥注意報は、どちらかいえば、火災予防に主眼がおかれておりますので、体感よりも環境の乾燥に目が向けられています。乾燥注意報の出る判定基準は、各地の土地の様子、地形によって数字は異なります。
たとえば、関西・関東の一部の例を示します。
兵庫県南部(神戸、淡路島) 最小湿度 40%で実効湿度 60%
京都府(北部・日本海側)  最小湿度 40%で実効湿度 70%
東京23区         最小湿度 25%で実効湿度 50%
埼玉県           最小湿度 25%で実効湿度 55%
神奈川県          最小湿度 35%で実効湿度 55%
ここに出ている最小湿度とは相対湿度をいいますが、その値が1日でもっとも低い数字をいいます。通常は午後2時〜3時ごろに相対湿度は低くなります。一方の実効湿度は、木材の乾燥具合を示しており、当日、前日の平均相対湿度を用いて計算されます。この実効湿度が60%より低くなると、乾燥状態が進んでおり、火災が発生しやすくなります。

3.乾燥と健康
(1)ウイルスの活動が活発になる
先日、関東地区の老人医療施設で、多数のインフルエンザ患者発生が問題になりましたが、この場合の原因の一つは院内の湿度が10〜20%と、かなり乾燥した状態になっていたため、ウイルスの動きが活発になったからであると、説明されておりました。
ウイルス感染を抑えるには、湿度を50〜60%ぐらいに保つ必要があります。病院側では余り湿気を高めると、一般細菌、カビの発生が懸念されると言っておりましたが、確かに、多湿状態では、ありうることです。梅雨時のじめじめした気候を想像してください。
室内の乾燥した状態を改めるには、加湿器という便利な器具があり、家庭にも普及してきております。加湿器というのは、ただ設置すればいいというものではなく、衛生的に、かつ安全に働かすにはそれなりに管理が必要です。
加湿をいつでも、だれでも手軽に出来る方法が濡れタオルを掛けることです。また、観葉植物を置くのも一方法です。
目下、インフルエンザウイルスの侵入には死亡率の高い鳥インフルエンザのこともあって、世界の国々がピリピリしており、防疫対策が練られております。我が国でも、これは同じであって、外出時には人ごみには出ない、マスクをする、手を洗う、を奨励され、生活環境の改善では乾燥状態を避けることが推奨されております。
(2)皮膚と乾燥
乾燥の健康への影響で、目に見えて怖いのは皮膚への影響です。皮膚はなんと言っても、からだの保護防御材(バリヤー)であり、体内の組織を一定の環境に保つのに働いており、身体に危険なものが接近・侵入しないように守っております。皮膚は寒冷のみならず、猛暑に耐え、紫外線を遮断して、その上、打撲や衝撃などの外圧からも身体を保護しなければなりません。皮膚のバリヤー機能は、乾燥と寒さで低下してくるので、冬にはアトピー性皮膚炎は悪化しがちといいます。
一方、肌荒れ、肌の乾燥というのは、デリケートなご婦人の肌には、少々の乾燥環境でも障害の起きるのは早く、そしてひどく現れる場合があります。
肌荒れは、皮膚の乾燥によるといいますが、皮膚の老化も無関係ではありません。
乾燥肌を予防するには、保湿剤を塗ること、これが手っ取り早い方法です。予防については後に詳しく触れます。
(3)体内の水分不足
 一昔前まで、激しい野外の運動の後、運動中には水分の補給は禁物でした、それが最近は逆になって、汗かいたり、激しい運動中は体内の水分不足に陥ちいらないよう、どんどん水分の補給をするようになりました。空気の乾燥しているときもしかりです。体表面から水分は失われてゆきますので、十分の水分補給を必要とします。通常は、口が乾いてくるので水分が欲しくなってきます。水分の補給が十分でないと、血液の濃度に影響して血流障害を引き起こすことがあり、その結果、循環器系統に障害を抱えている人では、最悪の場合には脳血管障害や心不全など好ましくない影響の出ることがあります。

4.カサカサ肌の予防
かさかさした荒れた肌は、乾燥肌といわれるほど、乾燥には深いかかわりがあります。
若々しい肌、しっとりした肌を保つために、どういうことをしなければならないか、考えてみましょう。
@皮膚に栄養を
 皮膚の健やかな状態を保つために、栄養クリームとか、乳液など、皮膚に栄養を与えるクリームはいろいろ出ております。最近は健康食品でも宣伝されておりますが、一部の高分子たんぱく質などは果たして皮膚の表面から吸収されるのか、疑問を抱く場合もあります。皮膚のビタミンぐらいでいかがかと思うのですが、これも一概には良否を判断しにくいものです。
A皮膚を清潔に
 身体に汚染物を取り込まないように、皮膚は防壁として働いているだけに、汚れ方もひどいものです。皮膚の表面からの刺激の少ない石鹸をつかって、つねに表面を洗い流しておくことが望まれます。肌荒れの原因の一つになる場合もあります。ただし、ごしごしと荒っぽく洗うのは、逆効果で、皮膚表皮を痛めるので良くありません。
B紫外線照射を避ける
皮膚の老化、かさかさ化の最大の敵は紫外線といいます。紫外線を避けることは、さほど難しいことではありません。日光に露出しないことですので、気軽に実行してください。
日傘の利用は夏だけではなく、最近ではオールシーズンになりつつあります。
C血液の循環を円滑に
生薬配合の入浴剤には血流改善の成分が含まれている場合があります。たとえば、カンピ、マツカワ、センキュウ、ショウブ,リョウキョウなどですが、こういう生薬成分の配合されている入浴剤に浸かるのは皮膚の健康には有効です。
D保湿剤の利用
保湿剤には刺激のある場合もあって、一様にとはゆかない場合もあります。さらに、保湿剤の種類は非常に多く、作用の仕方も異なります。たとえば、アトピーの人は、風呂上りに保湿剤を使うことは多いのですが、皮膚に合う、合わないがあります。数ある中でどのタイプの保湿剤を使うかは医師との相談を奨めます。とくに、敏感肌の人や、赤ちゃん、肌に炎症が起きている場合などは専門家による診療が欠かせません。
水を沢山飲んだら、皮膚がしっとりしてきます、という話は笑い話であって、口から入れた水では、皮膚の水分補給は出来ません。水は外から補います。かさかさしてくるのは、皮膚の構造の一部、角層が水を保持する機能が年齢とともに減少するからです。そのために、保湿剤を皮膚に塗ることは効果的です。水にさらさらしているのがクリームで、油脂の入っているのが軟膏ですが、これはべたべたします。両者は季節によって使い分けます。
保湿剤の有効成分は多々あります。保湿剤には水分の蒸発を防ぐタイプ、皮膚に水分を保つタイプとがあり、生体系、動植物性、多価アルコール系などがあります。最近好んで使われるのが、生体成分に近い生体系物質です。激しい宣伝合戦も行われてり、どれがいいかは、相性もあって決めがたいのですが、余り余分なものが入ってないのがいいでしょうと医師は書いております。毎日2,3回も使うものですから、経済性もいります。
乾燥して荒れてしまった皮膚の症状となれば、専門家の治療を受けることになります。そのようにならないようにひどくなる前の措置では、上述の保湿剤の使用が効果的ですが、普段から、刺激の少ない、皮膚にやさしい石鹸を使うことも予防策になります。たとえば、延寿石けんは、添加剤に化学物質を含まず、穏やかな天然素材で出来ており、皮膚の保護には効果的です。
E入浴の効果
アトピー性皮膚炎の症状は心身の影響を受けやすいといい、また、顔色が心の鏡のごとく振舞うことがあるというように、皮膚は心身の状態から無関係ではありません。時にはゆったり入浴して、心身を休め、皮膚も休ませてください。また、入浴で乾燥から皮膚を守ることも必要でしょう。


<参考文献>
飯田睦治郎:日本の気象、椛ヌ社、東京(2005)
田多井吉之介ほか:健康歳時記、蒲L斐閣、東京(1979)
田上八朗:皮膚の医学、中央公論新社、東京(2003)
気象庁ホームページ

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