【延寿通信】 2009年04月30日(木)

延寿通信 第69号 2009年5月

痛みを我慢してはいけません

痛みの話


痛みを我慢してはいけません
「痛み」という言葉は意味するところが広く、心の痛みと、身体の痛みとがあり、受け止め方もさまざまです。ここでは身体の痛みを扱うことにします。身体の痛みといっても、これまた部位によって、種類によって、痛みの性格は大きく異なってきます。「痛み=痛覚」は感覚のひとつで、他には触覚、味覚、視覚、嗅覚、聴覚などあります。それぞれ目、耳,鼻ほか身体の感覚器官がセンサーとなって外部からの情報を受け止めて中枢に送り、そこで感じたものが感覚となります。

1.「痛み」という感覚
感覚の程度はまちまちで、たとえば、美味しい、美しい、やかましい、芳しい香り、快い音色などの感覚は日常の暮らしで一般に感じており、強弱、好悪さまざまです。これらの感覚は、対象となる物が存在しますので、共通の認識が出来ます。人によっては感じ方は一律ではなく、Aさん、Bさんが同じようにある物を「美味しい」、「いい香り」と、感じないことはあります。しかし、第三者のCさんに、その物体を示して、感じたことをうかがうことは出来ます。
 ところが、「痛み」=痛覚 だけは異なります。Aさんの口に出している頭痛は、Bさんには通じません。どの程度、どのように痛いのか、Aさんが言葉を尽くして説明しても、Bさんには手に取るようには分かりません。「これがこの痛みです」と、対象物を示すことが出来ないからです。ただし、局部の刺激痛、針でチクリは瞬間ですが、ある程度の共通性があります。
 「痛み」=痛覚は物指しで測定することも出来ません。たとえば公害などで問題になる音の場合、ある場所の音が「70デシベルです」と言えば、程度が分かり、公害の基準を超えているか、いないか、周りの人には理解出来ます。匂いの場合も物指しが出来ております。ところが「痛み」は、これができません。Aさん、Bさんがともに、同じ痛みを感じていたとしても、2人には受け止め方が違うし、Aさんは激痛というかもしれませんが、Bさんにはごく普通の痛みかもしれません。
「痛み」=痛覚というのは受ける人の状態、環境によっても変化します。子供が転んで怪我をすると、遊びに夢中になっている時は、痛みを感じませんが、母親に会って「その怪我はどうしたの、血が出ているじゃないの」と、やさしく言われると、子供は急に痛みを感じて泣き始めます。子供だけではなく、大人の場合も、戦時の場合は、必死になっているときは怪我が分からず、ほっとして、はじめて負傷に気づき、激痛を感じることがあるといいます。
 身体の痛みにはいろいろありますが、痛みの極め付きは尿路結石であるとか、帯状疱疹であるとか、あるいはガンの痛みであるとか、世間ではいろいろ言われておりますが、このあたりのことも、「痛み」という感覚の特徴を表しているのでしょう。

2.痛みと部位
歯の痛み、頭痛、胃腸の痛み、腰痛、ガンの疼痛 いろいろ痛みはありますが、部位によって原因はそれぞれ異なり、治療法も、使用する薬剤も違います。
痛みの中でも世間一般では頭痛が一番多く、国民の4人に1人(約3000万人)は頭痛持ちといいます。その頭痛にも、いろいろあります。頭痛には大きく分けて、機能性頭痛と症候性頭痛との2種類があります。
最も一般的なのが機能性頭痛です。この中には緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛があります。普通の「頭が痛い」は緊張型頭痛で、3000万人のうち、2200万人が、この頭痛に日ごろ悩まされています。片頭痛は女性に多く840万人、群発頭痛はやや特殊で少なく、こちらは男性が多くて、患者数は1万人といいます。
頭痛持ちは一般的に女性が多く、緊張型頭痛では6割が女性、片頭痛は8割が女性だそうです。逆に、群発頭痛は男性が女性の5倍です。
頭痛というのは世界では40%の人が経験しているといいます。歯痛と同様に一般のだれもが経験する日常の痛みと言えましょう。
頭痛に次いで多いのが、腰痛と膝関節痛です。日本人の場合、両者の患者は各1000万人といいますので、5人に1人は、腰痛か膝の痛みに悩まされています。膝の関節痛では、65歳以上の女性が4割を占めています。
痛みには急性痛と慢性痛とがあります。ここで述べているのは急性の痛みで、侵害受容性疼痛ともいい、外傷や打ち身などですが、これらには抗消炎剤が効ききます。
しかし、慢性痛は急性痛とは発生の機構が異なり、がん性疼痛や心因性疼痛をいい、急性痛の連続したものを言うのではありません。

3.痛みを我慢してはいけない
 痛みには出来るだけ早く対処して取り除きなさい、というのが最近の学説で、ひところのように言われていた、次のような発言は、いずれも大いなる誤りである、と指摘されています。
・痛みは我慢が大事である、痛みを我慢するのが男の子だ
・痛みを我慢するのは豪胆であり、美徳でもある
・痛みは生体正常反応で、病気の手がかりだからこれを止めては いけない
・鎮痛薬は副作用が怖いから、安易に服用しないほうがいい
・痛みぐらいでは死なないから、すぐ薬を飲まないで、ほっとき なさい

 痛みを我慢すると、ストレスはたまり、食欲も衰えます。気分はむしゃくしゃで、冴えません。痛みは心身の痛みに転じ、心因性慢性疼痛に移って行くこともあります。さらに、
単純な痛みが神経末端障害性の複雑な痛みとなり、慢性化する恐れがあります。こうなると、痛みの感受性は変化して、普通の痛み止めでは効かなくなってしまいます。そのために、痛みの早い除去が望まれるのです。
 痛みの治療は薬剤による場合が多いのですが、さまざまの痛みには、それぞれ最適の薬剤があります。歴史的には紀元前400年、古代ギリシヤにおいて、痛風の痛みに柳の木の樹皮が使われておりました。この柳の樹皮の有効成分は、近年になって研究が進み、1838年にここからアセチルサリチル酸が発見され、鎮痛薬としてアスピリンの名前で商品化されました。アスピリンは今日もなお、鎮痛薬の主役にはありますが、小児には、このところ副作用のため使用されなくなりました。
新しい非ステロイド性消炎剤は目覚しい進歩を遂げ、次々といい薬が出てきております。急性の痛みでは、最近は非ステロイド性消炎剤の系統が主として使われます。副作用も減り、指示に従えば、その心配は少なくなります。ただし、一般薬といえども、効かないからといって、量を増やしたり、回数を増やしたりという、指示を超えた使い方は厳に慎むべきです。
「痛みにはすぐ薬を使いなさい」というのも安心して非ステロイド性消炎剤が使えるようになったからです。歯痛や頭痛などの薬は大部分がこの範疇に入ります。しかし、使用上の注意はお守り下さい。鎮痛薬を侮ってはいけません。
頭痛の中でも、片頭痛は緊張型頭痛の痛みとは原因が違うので、初期の間は非ステロイド性消炎剤でいいのですが、本来の治療には別の血管収縮の薬を使います。片頭痛専用のいい薬がでています。
ガンの痛みは、これも我慢する時代ではなくなり、早い段階から痛みを取り去るようにという治療法に変わってきております。ガンの痛みがあると免疫力が低下しますので、ガンそのものの改善にも悪い影響が出ます。
わが国のがん治療では、この痛み緩和対策が他国に比べて遅れているといいます。WHO(世界保健機関)では延命とともに、ガンの痛み緩和ケアを早い段階に導入することを勧告しております。苦痛を緩和してQOL(治療以外に病人としての日常の暮らしの質)を改善することは、疾患治療にもいい影響を与えます。「笑い」がガン治療に効果的という学説も、これに関連しております
ガンの痛みにはモルヒネのような麻薬の使われる場合が多くなりました、あへんは古代エジプトの時代から鎮痛に使われてきた麻薬ですが、あへんから取り出されたモルヒネはガンの痛み除去に効き目は素晴らしく、最近では医師は躊躇なく本剤を使うようになりました。WHOはモルヒネのガンへの使用を20年前から奨めていますが、わが国では、かつてはややためらいがありました。
 痛みには薬が一番とは言うものの、薬以外でも痛みを和らげることのできる場合があります。その一つは入浴です。

4.痛みと入浴
痛みで入浴が奨められるのは血流の回復というか、温めて血液の循環を良くすることと、ストレスを和らげることにあります。ただし、これが治療に結びついて良い効果をもたらす場合と、逆に痛みを助長する場合とがありますので、部位、種類によって要注意です。もちろん、痛みあれば、入浴どころではない、そういう時もありましょう。
入浴が効果的であるというのは、ぬる目の湯に入って、筋肉を弛緩させ、新陳代謝を促し、副交感神経の働きで精神的にもゆったりさせる、これらの作用が期待されるからです。
入浴で痛みが緩和されるのは、痛みの中でも一般的には筋肉痛が対象になります。たとえば、入浴剤を使って痛みを和らげることが出来るのは、医薬部外品の入浴剤では効能として神経痛、くじき、腰痛、打ち身などが挙げられています。
入浴がストレスを取り除き、血流改善で肩こりを楽にするので、緊張型頭痛に効果があるといいます。
しかし、頭痛の中でも片頭痛は、頭蓋内血管の拡張が原因の一つでもあり、温度・気圧の変化は好ましくないので、入浴は避けるべきです。片頭痛の治療では頭を冷やすほうがいいと言いますので、入浴は逆効果になります。

5.痛みとの付き合い
 『痛みのサイエンス』の著者半場道子先生は、本書の末尾に痛みとうまく付き合う方法を次のように挙げておられます。ここでは、その内容を要約します。

@痛みを我慢してはいけません。急性の痛みにはすぐ対処しなさい
A痛みは他人には分からない孤独な感覚です。痛みからの脱却は自ら考えて行動します
B医師に伝えるときは、痛みを的確に表現してください
C痛みは自ら制御できるものと思いなさい
D痛みを何か没頭できるものに転嫁して、明るい暮らしを心がけてください

<参考文献>
半場道子:痛みのサイエンス、新潮社(2004)

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【延寿通信】 2009年04月02日(木)

延寿通信第68号 2009年4月

マツカワの抗アレルギー効果/抗アトピー性皮膚炎の効果


 今年のスギ、ヒノキ花粉飛散による鼻、目のアレルギー症状の発症は例年になく激しく、たくさんの方が悩まされました。2月ごろから症状が出始めて、4月になって、そろそろ終息の時期かと思われますが、いかがでしょうか。
 アレルギーとなると実は疾患の範囲は非常に広く、たとえば、ある専門書では、アレルギー疾患として、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、食物アレルギー、アレルギー性鼻炎・花粉症、関節リウマチ まで並んでおります。共通しているのは、人体の免疫反応が関係していることで、これによって、全身的な、あるいは局所的な障害を起こすことです。
 アレルギー症状で、歴史的に最も早く記録に残されたのは5000年ほど前に、エジプトのメネス王がハチに刺されて死亡したという記事だそうです。免疫という用語は、わが国では伝染病の「疫を免れる」という意味で、たとえば天然痘の予防に用いられる種痘や、あるいはジフテリアのワクチンなどもその中にあって、これらが免疫の主流として用いられてきたため、今ここでテーマにしようとしているアレルギー症状とは、やや異質の感じがいたします。もちろん両者は根底ではつながっております。古くて新しい病気、それがアレルギー疾患、アトピー性皮膚炎です。
 今回のテーマはこれまでもたびたび本欄で取り上げてきたマツカワ(植物名ではイヌカラマツ)について、この植物の抗アレルギー効果、とくにアトピー性皮膚炎に対する有効性を、いくらか詳しくご紹介することにいたします。

1.アトピー性皮膚炎とは
 1920年Cocaは一定の物質による人間特有の先天性過敏症を「不思議な病=アトピー」と名づけました。これが、今日、わが国で多くの患者が悩まされているアトピーという病気が医学の世界に顔を出してきた端緒であります。まだ、生誕90年です。もともと不思議な病気ですので、本質は不明のままでしたが、アトピーでは本人および家族に気管支喘息、枯草熱、アレルギー性鼻炎が認められ、これらが遺伝して、この家系の人には特定の食物や抗原には異常に敏感であるといわれていました。
 アトピー性皮膚炎の研究が進んだのは1980年以降です。それまでは、アトピー性皮膚炎発生の原因や治療のことも、さまざまな説があって、素人療法も絡んで複雑な様相を呈していました。さいわい、近年になって、本体の研究が進み、基本的治療も固まってきました。つい最近、厚生労働科学研究「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2005」が発表され、症状の実態や治療の考え方などは大きく前進しております。
 それによると、アトピー性皮膚炎の定義は「アトピー性皮膚炎は憎悪、寛解を繰り返す掻痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ」とされています。このアトピー素因(体質)というのは、気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎の家族歴・既往歴があるか、あるいはIgEという抗体を産生しやすい体質を言います。
 アトピー体質の家族歴では、両親に本症状の既往歴がある場合、その子供の75%に、両親のいずれかに既往歴のある場合は56%に、両親に既往歴のまったく見られないときには21%の確率で発症するといわれております。
 アトピー性皮膚炎の皮膚は乾燥肌になるのが特徴で、このため皮膚のバリア機能が低下します。バリア機能というのは、外部からの有害物質や刺激の侵入を防ぐ働きをいいます。
 このような皮膚炎の発生は免疫学の領域で、T細胞というリンパ球がかかわります。T細胞はアレルゲン(抗原)との接触で抗体を産生し、それがサイトカイン産生をよびます。サイトカインは免疫担当のT細胞によって分かれますが、ここではTh1細胞が中心です。サイトカインというのは細胞から分泌される情報伝達物資で、ホルモンと作用は似ていますが、性状はまったく別です。このサイトカインの動きによって炎症、かゆみの発生、すなわちアレルギー反応が出ること、ここではアトピー性皮膚炎が発症することになります。
 

2.アトピー性皮膚炎の治療
アトピー性皮膚炎の症状が出るのは、アレルギーという原因ははっきりしていても、発症の背景は単純ではありません。たとえばストレスも関係してきますし、悪化因子は年齢によっても大きく異なります。アトピー性皮膚炎でかゆみの発生する要因は温度・発汗が96%、衣類(ウール)が91%、次いで精神的ストレスが81%、以下食物が49%となっています。
治療では何よりも皮膚の衛生、保護が重要で、いわゆるスキンケアとして、皮膚の清潔、保湿、環境の整備などがあります。皮膚の清潔では毎日の入浴・シャワーがあげられます。皮膚の保湿には、とくに注意が向けられております。
 薬物療法では、免疫の作用に重点をおいて、ステロイド外用剤やタクロリムス(免疫抑制剤)、抗ヒスタミン剤の3種が基本の薬物になっております。これらの他に、全身的対症療法薬の一つに漢方薬が挙げられます。さきほどもご紹介したように、症状の悪化にはいろんな要素が絡んできますので、漢方のような、全身対象の医薬品の利用が効果的の場合があります。ステロイド外用剤やタクロリムスは免疫を抑制する作用を有しております。これらは優れた治療薬ではありますが、副作用もあることから、本剤の効果を的確に発揮させるためには、医師の管理下で使用します。

3.マツカワの効果
マツカワはイヌカラマツとも言われマツ科に属する中国原産の薬用植物で、古来、中国では皮膚科関係の疾患、特に真菌感染症に用いられてきました。
このマツカワの薬理作用について、抗アレルギー作用、アトピー性皮膚炎の有効性を次のような綿密な研究によって結果が発表されております。
その研究成果の一部を紹介します。
(1)ヒスタミン遊離阻害作用
(2)角質水分量、経表皮水分蒸発量
(3)アトピー性皮膚炎モデルマウスの有効性
(4)菌増殖の抑制

(1)ヒスタミン遊離阻害作用
 ヒスタミンはアレルギー反応を引き起こす中心的存在で、免疫グロブリンがマスト細胞に結合すると、マスト細胞からヒスタミンが放出されます。ヒスタミンは生理活性物質で、これは血管の拡張や透過性を高めるので、浮腫や痒みなどの症状が現れます。そのため、アレルギー症状を発症させないためには、このヒスタミンを放出させないようにすることが重要です。ヒスタミン遊離阻害作用を試験することは、この放出を抑制する作用を見るためです。試験結果では、マツカワには強い抑制作用が出ております。
現在、アレルギー性鼻炎や、喘息などの予防・治療薬として定評があり、広く使われているクロモグリク酸ナトリウム(商標:インタール)は、このマスト細胞からのヒスタミン放出抑制に強い作用を有しております。マツカワには、それと類似する作用があります。
(2)角質水分量、経表皮水分蒸発量
 アトピー性皮膚炎では皮膚の乾燥が症状を重くするので、症状を鎮めるためには、できるだけ皮膚の保湿を考えます。とくに風呂上りでは、皮膚の湿気を逃さないよう配慮します。ここで行われた試験は、皮膚の湿度がマツカワによって、どのように保たれているかを判断するためのものです。豚の背中の皮膚を用いて試験したものですが、マツカワ投与後、角質水分は増加しており、水分の蒸発量に変化はなかったと報告されております。
(3)アトピー性皮膚炎モデルマウスの有効性
 アトピー症状を有するマウスを用いて、皮膚にマツカワエキスを28日間塗布して、その経過を見るのですが、モデル皮膚炎を悪化させることなく、またマウスの体重にも影響はなかったとのことで、有効性は確かめられました。
(4)菌増殖の抑制
 アトピー性皮膚炎の場合、痒みが激しいので、意識的に、あるいは無意識に激しく皮膚を掻くために、皮膚が破れて細菌の侵入が起こり、患部はますます悪化して、痒みが増すという悪循環を招きます。この細菌感染を少しでも防ぐということは、痒みを抑えるために重要です。化膿の激しいときには抗生物質投与がありますが、通常は余り使わないで、穏やかな痒み防止薬物の使用が推奨されます。
このテストではマツカワエキスによって、菌の増殖が抑制される否かを調べたもので、判定結果では、その効果が認められております。
もともと、漢方の世界でマツカワが長い歴史にわたり使われてきたのは、この微生物感染の分野であって、特に真菌類増殖の抑制には効果のあることが知られております。

5.おわりに 
 アトピー性皮膚炎の疾患および治療は、一部をここで紹介したように最近になって急激に進んでおります。しかし、まだ根本的な治療という点では、これからの臨床研究の進展を待たねばなりません。
 後半部分にて取り上げたマツカワは入浴剤 延寿湯温泉の主要成分でもあります。マツカワのアトピー性皮膚炎に対する試験の結果をご理解いただけたかと思います。ただし、この結果は動物試験で、また、試験に使ったのはマツカワのエキスであり、濃度は医薬品を前提にしていますので高く、医薬部外品の延寿湯温泉の場合とは、やや異なります。  
 入浴剤の延寿湯温泉では、配合された他の生薬成分の相互作用も加わり、毎日の入浴で使用しても差し支えないよう作用は穏やかにしてあります。アトピー性皮膚炎の激しい痒みから解放されることに入浴剤 延寿湯温泉が少しでもお役に立つことが出来ればいいのですが、一度お試しください。

<参考文献>
厚生労働研究「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2005」
平澤康史ほか「イヌカラマツエキスの抗アレルギー作用ならびにアトピー性皮膚炎に対する有効性の検討」日本薬理学会雑誌、Vol.124(2004)、No.4  271-283

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【延寿通信】 2009年03月02日(月)

延寿通信 第67号 2009年3月

本書は入浴の科学、温泉医療の話などユニークな内容が特徴です。

--阿岸祐幸著「温泉と健康」の紹介

『温泉と健康』温泉と入浴の医療を学ぶ 

このところ、温泉や銭湯あるいは入浴にかかわる書物はたくさん出版されており、本欄でもすでに何冊か紹介してきております。温泉の本といえば、ピンからキリまで多種多様ですが、本年1月に出版された阿岸祐幸先生の岩波新書『温泉と健康』は一味違います。
まさに入浴・温泉科学の本であり、科学的というか、医学の立場で、入浴と温泉医療が親切に説明なされております。阿岸祐幸先生は温泉医学のお医者さんで、長年にわたり大学、温泉医療研究施設で温泉医学を研究され、豊富なご経験、臨床のデータが本書ではベースになっており、温泉そのもの、健康のための入浴・温泉療法が的確に語られています。
入浴や温泉医療にご関心ある方には一読をぜひお奨めいたします。
本書は次のような構成になっております。
@温泉の基礎 A入浴の心身への作用 B温泉療法の意義 C科学的にみた泉質D温泉療法の効果とメカニズム E温泉地周囲と健康づくり
 詳細は本書を手に取っていただくとして、ここでは本書の中でもユニークなところに絞って、温泉へは深入りを避けて、A入浴の心身への作用とE温泉地周囲と健康づくり、を中心に取り上げます。

1.温泉は医療に正しく利用されているか
 本書は温泉医療が中心です。先生の長年の研究は温泉医療ですので、温泉は健康維持、医療に正しく利用されねばならない、というのが本書の狙いであり、その啓蒙書でもあります。日本の今日の温泉は医療には的確に利用されているとはいいがたく、諸外国に比べると、世界のトップクラスにあるわが国の豊富な温泉が宝の持ち腐れのような状態にあると、先生は残念がっておられます。
 一つには、わが国の温泉が休養を中心においており、短期滞在の歓楽型で、医療よりも食事や景観に十点がおかれ、施設が豪華になってきていることです。その結果どうしても利用料金が高くなり、利用客に負担がかかります。
本書では欧米の温泉療法の例、温泉地が紹介されておりますが、先生の目で選ばれたということはありますが、医療という立場での温泉とは、こういうものかと、違いを感じさせます。欧米の温泉では医師が駐在して治療、指導にあたり、さらに治療のプログラムも用意されて、医療施設として十分配慮されています。温泉保養地は歓楽の施設ではなく、あくまでも療養のためにあって、温泉の泉質だけでなく、入り方、温泉をとりまく環境も
含めて、健康のために利用しなければならないのです。
 わが国には古くから湯治ということがあり、今もなお地域によっては連綿と続いておりますが、温泉の利用をちょうど、湯治という立場で理解すると、本書の先生の主張は分かりやすいか思います。

2.入浴の心身への作用
 必ずしも温泉とは限らないのですが、入浴というものが身体に与える影響を医学的に理解しておくことは重要です。この中で取り上げられているテーマは次の通りです。
 身体が軽くなること、静水圧の効果、循環器系統への作用、入浴の利尿作用、望ましい半身浴、水中と空中との温度の感じ方、入浴と高血圧、活性酸素防御機能、熱ショックたんぱく質、高温浴と血栓、入浴の心理的効果
 これらの中から、興味深いところを2、3 取り上げます。
(1)循環器系統への作用
 水の中に身体をつけると、水圧が加わり、身体は圧迫されてきます。静水圧というのは水圧のなかでも、流れていない水の圧力をいいますが、通常は水圧という用語で済ませることもあります。静水圧は水にもぐったとき、10メートルの深さで1気圧といわれております。立ったまま、風呂に浸かると、体表面が1.4平方メートルの場合、560kgの水圧がかかってきます。これは非常に大きな圧力であり、このために、身体は圧迫されて縮んできます。10分間浸かっていると、男性の場合、腹囲は4センチ縮むというデータがあるそうです。これだけ水圧がかかってくると、体内の血液循環にも影響が出てきます。静脈は柔らかいので、伸び縮みしやすく、水圧が加わると静脈は圧縮され細くなります。
手足、皮膚、腹部の静脈血液は心臓に向かって移動しはじめます。このことを「静脈還流が増える」といい、心臓に負担のかかることを示しており、もともと心臓に障害を抱えている人には好ましいことではありません。しかし、これが半身浴であると、立っているときの数字とさほどかわりないため、心臓への負担は大きくないそうです。全身浴といって首までどっぷりつかって、長時間入っているのが心臓に良くないのであって、この入り方を改めれば、さほど心配はありません。
(2)入浴と血圧
心臓の負担を減らすさらに好ましい浸かりかたは「寝浴」といって、浅い浴槽で寝るような姿勢で入ることです。いわゆる洋式の浴槽が、この「寝浴」用になっており、最近もわが国の風呂桶の主流になってきているようです。寝浴ですと、循環器系への影響は少なく、手足を十分に伸ばせるので、筋肉や関節の緊張が緩む、さらに、心理的にリラックスできる、薬効成分の体内への吸収が多い、など半身浴にくらべて利点があります。
入浴と血圧との関係では、湯の温度によって血圧は影響されますが、39度以下のぬるい湯ではほとんど変わらず、次第に低下します。逆に42度以上の熱い湯の全身浴では入浴直後に血圧は上昇し、血管も収縮するので、血圧上昇値は大きくなります。2~3分たつと、血管は拡張するため、一旦は下がりますが、次に内臓や筋肉の血管が収縮して平常時の数値にて血圧を維持しようとして血圧低下は止まります。

3.温泉の環境が健康にプラスになっている
(1)保養と休養
 温泉に出かける目的には休養と保養とがあります。先生は「休養」と「保養」という言葉を次のように使い分けておられます。
「休養」とは休み、養うこと、1〜3日程度の期間で,日常生活で生じたストレスや疲労を取り除くことが目的となります。一方、「保養」とは、1〜3週間ほど滞在して、休養に加えて次の活動のために体調を整え、体力増加や健康増進を目的に積極的に行動することです。
 本書では、「温泉療法」という用語が使われておりますが、「療法」は病気治療の手段・方法であります。「温泉療法」にはわが国の湯治も含まれます。  
温泉療法は温泉に浸かるだけではなく、食事療法、運動療法を組み合わせて、広く解釈する場合もあります。本書では、後者にあって、温泉保養地医学という立場で、温泉療法が取り上げられております。
 温泉地の環境が健康に役立っていると言う見方はユニークであり、本書独自の内容でもあります。
(2)森林浴とテルペンの効果
 温泉のある場所といえば、通常は都会から離れた、緑深い山の中、あるいは日光さんさんの海辺などが浮かんできます。緑の中では、とくに森林浴は心身をリフレッシュさせる健康法として定着してきました。うっそうと茂った緑の中を散策するのは、手軽に出来る健康法の一つであり、このような環境にある温泉地では、単に温泉に浸かるだけでなく、緑の散策を奨めておられます。特に、先生はアロマテラピーの中でも、森林の精油、テルペンの心身に与える効果に目を向けておられます。
 テルペンというのは、いわゆる植物の芳香性精油成分を言い、爽やかな心休まる香りの
いい精油の大部分が、この中に含まれます。森林の中を歩いていて、気分が爽快になるのはこのテルペンのせいで、「フイトンチッド」ともよばれております。たとえば、竜脳(ボルネオール)や樟脳(カンフル)はテルペンを代表する仲間です。生薬の世界ではテルペンは大事な精油成分でもあり、縁が深いのです。ヒノキや杉の仲間もボルネオールを含んでおりテルペンのいい香りを発散します。参考までに入浴剤「延寿湯温泉」の香りはこのテルペンであり、ボルネオール、カンフルが働いております。入浴剤にテルペンが入っているというのは非常に珍しいです。
 海岸の温泉では海の自然療法としてタランソラピー(海洋療法)が取り上げられていますが、ここでは略します。

<参考文献>
阿岸祐幸:温泉と健康、岩波書店、東京(2009)

ご覧下さい!
『釈ビューティ』(ワニブックス)が1月に出ました 著者:釈由美子さんのお話
「ダイエットやビューティは女性にとっての永遠のテーマでもあるし悩みは尽きないもの・・・・。だからモット美しく、モット健康的に向き合っていきたいですよね。今回、初めての美容本を出せていただくにあたり、読んでくださる方に精一杯の感謝の気持ち込めて、今、私が持っているすべてのビューティ法や、おすすめの商品を「これでもか!」っていうくらい 1冊にぎゅっ!!とたくさん紹介させていただきました」(あとがきより)
<この本の56ページに 入浴剤「延寿湯温泉」が紹介されております。釈由美子さんの写真がいっぱいの楽しい本です。 延寿通信編集部> 

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